🐢カメ9:クサガメ ― 日本の水辺を歩く在来種 ―

カメシリーズ

― 日本の川やため池で昔から見られる在来のカメ。それがクサガメである。落ち着いた黒褐色の甲羅、黄色い頬の模様、静かに水底を歩く姿――どれも日本の水辺に溶け込むような素朴さを持つ。外来のアカミミガメが勢力を広げる中でも、地域によっては今も小さな群れが暮らしをつないでいる。

この章では、クサガメの特徴・生態・分布・在来種としての意味を整理し、昔から水辺の風景に寄り添ってきた在来のカメの姿を見つめる。

📘 基礎情報(クサガメ)

  • 分類: カメ目 ヌマガメ科 クサガメ属
  • 分布: 日本(本州・四国・九州)
  • 体長: 約15〜25cm
  • 食性: 雑食(昆虫・小魚・水草・藻類)
  • 寿命: 20〜40年
  • 特徴: 黄色い頬線・黒褐色の甲羅・水辺歩行が得意
  • 繁殖: 初夏に産卵、砂地に10〜20個ほど

🐢目次

🟡 1. 特徴と見分け方 ― 黄色い頬線と落ち着いた甲羅

クサガメは、外来のアカミミガメよりもやや小型で、落ち着いた色合いの甲羅を持つ。

  • 黄色い頬線:最大の特徴。頭部の横に細く伸びる
  • 黒褐色の甲羅:成長とともに暗くなる傾向
  • 甲羅の形:やや扁平で、浅瀬を歩くのに向く
  • 動き:ゆっくりだが水底を歩くのが得意

幼体は明るい黄色の模様が多く、成体になるにつれて落ち着いた色味になる。

🏞 2. 生態 ― 水底を歩く在来種の暮らし

クサガメは雑食性で、季節や場所によって食べるものを柔軟に変える。

  • 春:水中昆虫・ミミズ・小型甲殻類
  • 夏:藻類・水草・小魚
  • 秋:落ちた果実や植物片

泳ぐよりも“歩く” 行動が多いのが特徴で、浅瀬や泥底で活動することが多い。

越冬は水底の泥の中で行い、身体の代謝を大きく落として冬を越す。

🗾 3. 分布と環境 ― 日本のため池文化と深い関係

クサガメは日本の水辺文化と深く結びついている。農業用のため池、河川の緩流域、湿地など、水温が安定する場所に多い。

  • ため池:最も重要な生息地。藻類と浅瀬が豊富
  • 河川の緩流域:外敵が少なく、バスキングに適する
  • 農村部の水路:水草と昆虫が多い

ため池が減少すると、生息可能な範囲も狭くなるため、地域によっては貴重な在来種となっている。

⚖️ 4. 外来種との関係 ― 減少の背景と現在の課題

クサガメはかつて日本各地で普通に見られたが、現在は多くの地域で減少している。その最大の理由が外来種のアカミミガメとの競合だ。

  • 日光浴場所を奪われる:アカミミガメが浅瀬を独占
  • 餌の競合:雑食性の外来種が優位に立つ
  • 産卵場所の減少:ため池減少や護岸工事の影響
  • 水質悪化:都市部では個体群が維持しにくい

外来種の圧力と環境変化の両方が重なり、在来のクサガメは静かに数を減らしている。

🌙 詩的一行

浅い水辺の影をゆっくり歩くその姿は、どこか昔の風景をそっと残している。

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