― カメの身体は、外から見える以上に特殊だ。背中の甲羅はただの硬い殻ではなく、肋骨と背骨が外へ広がって形づくった“体そのもの”。呼吸の仕組みも他の爬虫類とは異なり、甲羅に固定された肺を動かすための独自の筋肉構造を持っている。水の中で周囲を察知し、陸上では太陽の熱を受け取る――カメは環境の変化を細やかに読み取りながら生きている。
この章では、カメをカメたらしめる甲羅・呼吸・体温調節・感覚器官を中心に、身体の仕組みをていねいに見つめていく。ゆっくりとした動きの奥に、緻密な身体構造が息づいている。
🐢目次
- 🛡 1. 甲羅の構造 ― 背骨と肋骨がつくった“内なる鎧”
- 🫁 2. 呼吸のしくみ ― 甲羅に固定された肺をどう動かすのか
- 🌡 3. 体温調節 ― 日光・水温・行動でつくる温度のリズム
- 👁 4. 五感と行動 ― 目・鼻・振動感知の鋭さ
- 🌙 詩的一行
🛡 1. 甲羅の構造 ― 背骨と肋骨がつくった“内なる鎧”
カメの甲羅は、背甲(上)と腹甲(下)の二層からなる。 外側を覆う角質板の下には骨質の甲羅があり、そこには背骨と肋骨が深く組み込まれている。
- 背甲:背骨と肋骨が一体化した骨のプレート
- 腹甲:肩帯・骨盤帯と連動し、全身の支点になる
- 成長線:角質板に年輪のような模様が広がる
- 構造の強さ:衝撃を分散し、外敵の噛みつきにも耐える
甲羅は「守る」だけでなく、 浮力の調整・体温の保持・体の支持にも役立つ。 カメの生活を支える、総合的な生存システムだ。
🫁 2. 呼吸のしくみ ― 甲羅に固定された肺をどう動かすのか
カメは肺で呼吸するが、肋骨が甲羅に固定されているため、 哺乳類のように肋骨を広げて肺を膨らませることができない。
代わりに、特殊な筋肉が肺の上下を押し引きして呼吸をつくる。
- 腹壁筋:お腹側を引き締めて肺を押し上げる
- 肝臓の位置:肺の下で“ピストン”のように動く
- 喉の動き:浅い水中では喉の上下で微量の酸素を取り込む
水中では長時間潜るが、 必ず空気呼吸が必要なのは、カメがれっきとした爬虫類だからだ。
🌡 3. 体温調節 ― 日光・水温・行動でつくる温度のリズム
カメは変温動物。 体温は環境によって大きく左右されるため、行動の選択が生命活動そのものに直結する。
- バスキング(日光浴):甲羅で太陽の熱を集める
- 水温の利用:冷たい水に入る・温かい浅瀬に移動する
- 消化との関係:体温が上がると消化速度も速くなる
- 冬眠(淡水の一部):低温で代謝を落とし、わずかな酸素で生きる
体温は「速さ」ではなく、 生きるリズムを刻むための基盤として働いている。
👁 4. 五感と行動 ― 目・鼻・振動感知の鋭さ
カメの感覚は、静かな見た目以上に鋭い。
- 視覚:水中・陸上の両方で焦点を合わせやすい
- 嗅覚:淡水ガメは匂いを頼りに餌を探す
- 振動感知:水中の揺れや接近の気配を敏感に感じる
- 聴覚:外耳はないが、低周波の音と振動に強い
環境の変化や外敵の接近を察知するため、 目と振動感知は特に発達している。 動きの遅さを補うための、静かな“察知”の能力だ。
🌙 詩的一行
甲羅に触れる光の向こうで、ゆっくりとした生命の輪郭が静かに息づいている。
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