― 実を残すという技術 ―
南瓜は、収穫して終わりではない。
畑で育った実は、台所で再び“育て直される”。
それは火や包丁の仕事ではなく、
時間という目に見えない手によるものだ。
🍂 保存の知恵 ― 時間とともに甘くなる
南瓜は、収穫した瞬間よりも、
少し置いたあとのほうが甘い。
それはでんぷんが糖に変わる“追熟”という変化。
農家は風通しのよい棚に並べ、
果皮が乾くのを待つ。
焦らず、腐らせず、
待つことそのものが技術だった。
🏠 貯蔵の工夫 ― 風と影の場所
昔の家では、南瓜を納屋や軒下に吊るした。
直射日光を避け、風だけを通す。
冬になると、実はしっとりと重くなり、
果皮が深い色を帯びる。
冷蔵庫のない時代、
この方法が最も自然で確実な保存法だった。
南瓜は“冬のたべもの”ではなく、
“秋の太陽を越冬させる器”でもあった。
🥢 暮らしに残る記憶 ― 冬を越える味
正月明け、雪に囲まれた村で、
母が棚から南瓜を取り出す。
表面は少し硬く、手のひらに冷たい。
それを切り、火にかけ、
湯気とともに甘い匂いが立ちのぼる。
保存は単なる手段ではなく、
冬を生きるための記憶の技術だった。
🌙 詩的一行
果実を残すことは、時間とともに生きること。
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