🎃かぼちゃ10：冬至の椀 ― 太陽を食べる日

― 冬の闇に、ひとさじの光 ―

一年で最も夜の長い日。
その夜、台所では静かに湯気が立ちのぼる。
冬至の椀に入るのは、切られた南瓜。
甘く煮た実を食べることで、
人は“太陽の力”を体に取り込むと信じてきた。

☀️ 太陽を食べるという信仰

冬至は、一年で最も太陽が弱まる日。
この日を境に日が少しずつ長くなるため、
“死と再生”の境界として古くから重んじられた。
南瓜の黄金色は、まるで小さな太陽。
火にかけて煮ることで、
失われた陽の力をもう一度呼び戻す。

日本では、江戸時代に「冬至に南瓜を食べる」と広まった。
保存のきく作物として秋に収穫し、
貯蔵しておいた実をこの日に食べる。
栄養をとり、病を防ぐための知恵でもあった。
寒さの中で口にする甘みは、
太陽の味そのものだったのかもしれない。

いまも各地で、冬至に南瓜を煮る家は多い。
砂糖と醤油で照りを出し、
湯気の中で果肉がほろりと崩れる。
ろうそくや電灯の下でも、
その橙の色が台所を照らす。
光は空にではなく、
鍋の中で静かに燃えている。

冬の太陽は、煮ものの中でやわらかく戻る。