― 境界に生まれる影 ―
夜明け前の畑に、黒い影が立つ。
鼻先の形は野生のまま、体には家畜の匂いが混じる。
森と人のあいだで揺れる命が、そこにある。
🌾目次
📘 基礎情報（記録）
- 分類： 哺乳綱 ウシ目（偶蹄目） イノシシ科
- 学名： Sus scrofa（イノシシ）× Sus scrofa domesticus（ブタ）
- 分布： 本州・九州・四国の一部で確認（主に交雑個体）
- 体長・体重： 体長 100–180cm／体重 60–150kg（個体差大）
- 体色： 茶褐色～黒、あるいは斑。体毛はやや短く、皮下脂肪が厚い。
- 食性： 雑食（農作物・果実・根・動物質など）
- 繁殖： 通年繁殖傾向が強く、年2回出産もあり
- 活動： 夜行性が多いが、人里での昼間活動も確認
- 保全状況： 交雑体のため保護対象外（地域によって駆除対象）
- 備考： 外来種や家畜ブタとの交雑による遺伝的影響が拡大中。
🌱 姿（形態）
交雑個体は、イノシシの筋肉質な体にブタの丸みを帯びた体形を併せ持つ。
牙はやや短く、皮膚は厚い。尾がやや長く巻くこともある。
毛色は黒から灰褐色まで多様で、体格も地域で異なる。
純粋な野生とも家畜とも言えない、不均一な姿をしている。
🌿 生態（暮らし）
農地や果樹園を荒らす例が多く、人間の作った環境に適応している。
家畜由来の遺伝により繁殖力が強く、行動範囲も広い。
地面を掘る力は野生のイノシシと変わらず、
森と畑の境界を往復しながら生きている。
その存在は、生態系と農業のあいだに新しい問題を投げかける。
🔥 関わり（人と家畜の境界）
交雑は人が作り出した結果でもある。
放牧や家畜逃亡、外来種導入などの積み重ねが、
野生と家畜の線を曖昧にした。
DNA分析では各地の個体群にブタ遺伝子が確認されており、
“イノブタ”として家畜化された例もある。
食文化として育てられる一方で、野生化したものは“害獣”と呼ばれる。
同じ種の中で、価値と境界が反転している。
🌙 詩的一行
人が描いた線の上を、イノシシは今日も越えていく。
🐗→ 次の記事へ（イノシシ7：狩猟と供養 ― 山の掟 ―）
🐖→ ブタシリーズを見に行く
コメント