🐗イノシシ5:リュウキュウイノシシ

イノシシシリーズ

― 島の孤影 ―

潮風に包まれた森の中を、黒い影が静かに通り抜ける。
葉の擦れる音も、湿った土の匂いも、海に近い。
小さな体の中に、太古の記憶を宿す。


🌾目次


📘 基礎情報(記録)

  • 分類: 哺乳綱 ウシ目(偶蹄目) イノシシ科
  • 学名: Sus scrofa riukiuanus(リュウキュウイノシシ)
  • 分布: 奄美大島・徳之島・沖縄本島北部など(南西諸島固有)
  • 体長・体重: 体長 約90–120cm/体重 40–80kg(ニホンイノシシより小型)
  • 体色: 黒褐色または黒。毛は短く粗い。
  • 食性: 雑食(根・果実・昆虫・小動物など)
  • 繁殖: 年中繁殖可能。1回の出産で2–4頭。
  • 活動: 夜行性。密林やシダ林を好む。
  • 冬眠: なし(温暖気候のため)
  • 保全状況: 絶滅危惧Ⅱ類(環境省レッドリスト)
  • 備考: 島ごとに遺伝的差異があり、個体群の独立性が高い。

🌱 姿(形態)

リュウキュウイノシシは小柄で、体高も低く、耳が短い。
体毛は黒く光沢があり、島の暗い森では影のように溶け込む。
鼻先は硬く、掘る力は強いが、動きは俊敏。
海風の影響で毛が荒れやすく、独特の風合いを持つ。


🌿 生態(暮らし)

島の森で、彼らは地中の根や昆虫を探して掘る。
降水量が多く、柔らかい土壌がそれを助ける。
果実や小動物も食べ、食性の幅は広い。
外敵が少ないため警戒心は薄く、人の気配にも鈍い。
それが時に、人との衝突を生むこともある。


🔥 関わり(文化・歴史)

古くから島の暮らしに欠かせない存在だった。
奄美では「ヤマシシ」と呼ばれ、狩猟と供養の風習が残る。
猪肉は貴重なたんぱく源として祭りや行事に用いられ、
狩猟具や儀礼も独自の文化を形成している。
近年は農作物被害や生息域縮小などの課題もあるが、
「島の民」としての存在感はいまも深い。


🌙 詩的一行

海の音を聞きながら、森の影を歩く。


🐗→ 次の記事へ(イノシシ6:ブタとのはざまで ― 境界に生まれる影 ―)
🐗→ イノシシシリーズ一覧へ

コメント

タイトルとURLをコピーしました