🦪 ホタテ4:動く貝 ― 泳ぐという進化 ―

ホタテシリーズ

貝は、大きくは動かない生き物だと思われてきた。
砂に潜り、岩に張りつき、場所を変えずに一生を終える。

ホタテは、その常識から少しだけ外れている。
普段は動かず、流れの中に身を置きながら、
必要なときだけ「泳ぐ」という選択肢を残した。

それは、移動のための進化ではない。
生き延びるために許された最小限の動きだ。

🦪 目次

🌊 1. 二枚貝が泳ぐということ

二枚貝の多くは、移動能力を持たない。
環境が変わっても、その場に留まることを前提に生きている。

ホタテは例外的に、成体になってからも泳ぐ能力を保つ。
これはイタヤガイ科に共通する特徴のひとつだが、
ホタテはその中でも特に知られた存在だ。

ただし、「泳ぐ貝」といっても、
長距離を移動したり、群れで回遊したりするわけではない。

ホタテの遊泳は、短く、断続的で、目的がはっきりしている

💨 2. ジェット推進 ― 殻で水を噴き出す

ホタテの泳ぎは、殻の開閉によって生じる水流を利用する。
殻を素早く閉じることで、水が後方へ押し出され、
その反動で体が前方へ移動する。

  • 動力:発達した閉殻筋
  • 方式:ジェット推進
  • 方向:殻の開閉角度で調整

この動きは、連続して行うことができるが、
筋肉への負担が大きく、長時間には向かない。

ホタテは、
必要な距離だけを、確実に稼ぐために、この方式を使う。

⭐ 3. 天敵との関係 ― ヒトデから逃げる

ホタテが泳ぐ最大の理由は、天敵の存在だ。
とくに重要なのが、ヒトデである。

ヒトデは動きが遅いが、
一度接触すると、ホタテを外套膜ごと包み込み、
時間をかけて殻をこじ開ける。

ホタテは、この段階に入る前に逃げる必要がある。
眼点で影や接近を察知し、
距離を取るために泳ぐ

泳ぎは、完全な回避ではない。
だが、ヒトデの腕が届かない距離を作るには十分だ。

🧭 4. 泳ぎ続けない理由

ホタテは、泳げるが、泳ぎ続けない。
その理由は、エネルギー効率にある。

ジェット推進は、
非常に燃費の悪い運動だ。
濾過摂食で得られるエネルギーでは、
常用するには負担が大きい。

そのため、ホタテは、
普段は動かず、
危険が迫ったときだけ動く

この使い分けが、
動かない生活と、逃げる能力を両立させている。

🌊 詩的一行

ホタテは、泳ぐ力を持ちながら、動かない時間を選び続けている。

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