🍄きのこ11:オオワライタケ ― 毒と幻覚のあいだ

見える世界がすべてとは限らない。


分類:担子菌類 ハラタケ目 フウセンタケ科
学名Gymnopilus spectabilis
分布:日本全国(広葉樹林の切り株や倒木など)
発生時期:夏〜秋
大きさ:傘径10〜25cm前後(大型)
毒性:神経毒(幻覚・錯乱・視覚異常・笑い発作)
主な毒成分:サイロシビン、サイロシン
食用/毒性:毒(食用不可・幻覚性強)


森の入口で見上げるようなきのこがある。
黄金色に輝き、厚い傘を広げるその姿は、
まるで「太陽の欠片」のよう。

それがオオワライタケ。
人はその名に笑いを感じるが、
本当は“見えてはいけないもの”を見せるきのこだ。


🌕 森の中の幻覚

オオワライタケの毒は、
脳をわずかに狂わせる。
時間が止まったように感じ、
空気が波打つ。
木のざわめきが言葉になり、
森の匂いが色になる。

それは恐怖ではなく、
森と同じ速度で見る世界
人の時間が、森の時間に合わせられていく。


🌲 森のまなざし

幻覚は、人の脳が作るもの。
けれど、森に入ってそれを経験した者は、
「見せられた」と感じるという。

森が自らの意識を、
きのこの毒を通して覗かせたのかもしれない。
幻覚性きのこたちは、
森の“もうひとつの目”。

人が忘れてしまった自然の思考を、
一瞬だけ呼び覚ます。


🕯 毒と神の境界

古代の祭祀では、
幻覚性のきのこが“神の食物”として扱われた。
人の理性を超えて、
神と対話するために。

だが現代では、それは“違法”と呼ばれる。
毒と神のあいだの距離が、
いつしか断ち切られてしまったのだ。

オオワライタケは、
その失われた境界線に立つ存在。


✨詩的一行

森の幻を見たとき、
人はほんの少しだけ、自然に戻る。

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