🍄きのこ8:カエンタケ ― 炎のように生きる

触れただけで、森は焼ける。


森の斜面に、
赤い指のようなものが突き出している。
雨上がりの湿った土の中、
それは本当に、燃えているように見える。

カエンタケ。
その名のとおり、“火炎のきのこ”。
触れれば、皮膚がただれる。
わずか数グラムで、人ひとりを殺す。

だが、その姿は――
息を呑むほど、美しい。


🔥 生きるための炎

カエンタケは、
ナラやシイなどの広葉樹の根元に生える。
森の病に寄生し、
枯れた木を分解して生きる。

毒は防御であり、同時に孤独。
森の中で誰にも近づかれず、
それでも立ち続けるために、
自らを燃やすようにして存在している。

その赤は、怒りではない。
生の執念の色。


🩸 森の警告

森が穏やかに見えるときほど、
このきのこは現れる。
生と死の循環が滞り、
森がわずかに歪んだとき、
カエンタケはその傷口に咲く。

つまり、森が人に出す“赤信号”。
環境の変化を、
静かに、しかし確実に伝えている。


🌹 美と恐怖のあいだ

人は炎を恐れながらも、
そこに魅了されてきた。
カエンタケもまた、
その“禁断の美”を象徴している。

触れてはいけない。
それでも、見てしまう。
森が創り出した“絶対の美”は、
恐怖と同じ場所に咲く。


✨詩的一行

炎の形をした命。
森がまだ、生きているという証。

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