🍄きのこ2:ベニテングタケ ― 赤い傘の誘惑

キノコ(有毒)シリーズ

毒の中にある、美という誘惑。


雨上がりの森で、
草の間に赤い傘が見える。
白い斑点、艶めいた表皮、
湿った空気の中でひときわ目立つその姿は、
まるで森が描いた“絵画”のようだった。

誰もが一度はその赤に心を奪われる。
けれどそれは、森が差し出す警告のリンゴ
ベニテングタケの美しさは、
人の理性よりも早く心を動かしてしまう。


🍎 美しさの構造

その赤は単なる色ではない。
紫外線を反射する光の層、
水分を弾く滑らかな膜。
すべてが、森の生存戦略として計算されている。

「触れてはいけない」と言われても、
その禁忌に惹かれるのが人という生き物。
毒きのこは、
人の“好奇心”という名の弱点を鏡のように映す。


🌲 神話と憧れ

古いヨーロッパでは、
ベニテングタケは“妖精の傘”と呼ばれた。
ロシアでは乾燥させて少量を口にし、
“神の夢”を見たという伝承が残る。

毒は恐怖であり、同時に憧れでもある。
人は危険の中に“別の世界”を見出してきた。
それが、森が人に見せた幻。


🌧 森の誘惑

森の中でこの赤を見ると、
心が少しだけ静まる。
恐怖ではなく、畏れ。
それは、人が自然に抱く“敬意”の原型。

毒とは、森が人に問いかける一種の対話だ。
「あなたはどこまで近づく?」
その問いに答えられない者だけが、
毒に試される。


✨詩的一行

美しいということは、
森に選ばれているということ。

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