美しいものほど、静かに人を試す。
森には、近づいてはいけない美しさがある。
光の差し込む苔の間に、赤い傘がひとつ。
雨上がりの滴を受けて輝くその姿は、
まるで森が飾りつけた宝石のようだ。
だが、それは“招く花”ではない。
森が人に見せるために置いた、境界の印。
毒をもつきのこたちは、
森の奥と人の世界を隔てる、見えない門番のような存在なのだ。
🩸 森の秩序としての毒
毒とは、森の“秩序”の一部。
弱いものを守り、強すぎるものを制すためのバランス。
ベニテングタケの赤、ドクツルタケの白――
それらは森が発する警告の色。
人が美しいと思うその色は、
森にとって「触れてはいけない」の印だ。
それでも人は惹かれる。
美しいものの裏にある危うさに、
無意識のうちに手を伸ばしてしまう。
🌿 毒と命の距離
毒は、命を終わらせるものではなく、
命の“限界”を教えるものでもある。
食べること、近づくこと、選ぶこと。
そのどれもが、生きるための判断だ。
森の中では、
毒きのこを食べる動物もいる。
量を知り、時を知り、
毒の中にある“生”を理解している。
人だけが、その均衡を見失った。
🌙 森が語ること
夜の森で光るきのこを見たことがあるだろうか。
その多くは、毒をもつ。
闇の中で輝く光は、
「ここに境界がある」と告げるサイン。
毒とは、森の言葉。
それを恐れるだけではなく、聴かなければならない。
森は、
「食べるな」と言っているのではない。
「考えろ」と囁いているのだ。
✨詩的一行
毒は森の声。
それを聴ける者だけが、生きて帰る。


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