ホタテは、海底に立つ貝だ。
だが、その一生は、最初から海底で始まるわけではない。
ホタテの時間は、
水の中を漂うところから始まる。
成体としての静かな姿からは想像しにくいが、
ホタテは一生の初期に、
もっともよく動き、もっとも広く拡散する。
その短い時期が、
ホタテの分布と世代交代を支えている。
🦪 目次
🌊 1. 繁殖のはじまり ― 放卵・放精
ホタテは、雌雄異体の二枚貝である。
成熟すると、海中に卵と精子を放出し、
体外受精によって次の世代が始まる。
産卵期は、水温の上昇と強く関係している。
日本のホタテでは、主に春から初夏にかけてが繁殖期だ。
- 繁殖様式:体外受精
- 産卵:放卵・放精
- 時期:水温上昇期
個体同士が直接接触することはない。
同じ海域で、同時に放出されることが、
受精率を高める条件になる。
🫧 2. 浮遊幼生 ― 流れに乗る時間
受精卵は分裂を繰り返し、
やがて殻を持つ浮遊幼生になる。
この時期のホタテは、
自ら泳ぐというより、
流れに乗って移動する存在だ。
- 生活場所:水柱中(プランクトン生活)
- 移動:主に海流・潮流による
- 期間:数週間程度(環境条件で変動)
この浮遊期間があることで、
ホタテは親の場所から離れ、
新しい海域へ広がる可能性を得る。
一方で、流れに左右されるため、
定着できるかどうかは環境次第でもある。
🪨 3. 着底 ― 底へ降りる瞬間
十分に成長した幼生は、
海底へ降りる準備を始める。
この段階で、
適した基質を見つけられなければ、
生き残ることはできない。
- 着底場所:砂礫・小石・人工基盤
- 条件:安定した流れと餌供給
- 失敗:着底できず死亡する個体も多い
ホタテは、カキのように強固に固着しない。
稚貝期には足糸を使って一時的に付着するが、
成長とともにそれを失い、表在性の生活へ移行する。
🌱 4. 稚貝から成体へ
着底後のホタテは、
稚貝として急速に成長する。
この時期から、
濾過摂食による生活が本格化し、
殻も厚みを増していく。
- 成長:濾過摂食による栄養獲得
- 生活位置:海底表在
- 成熟:数年で繁殖可能に
成体になると、
生活範囲は大きく変わらない。
動く時間より、留まる時間のほうが圧倒的に長い。
だが、必要な能力――
逃げるための泳ぎや、感覚器――は、
この段階でも失われない。
🌊 詩的一行
ホタテは、最初に漂い、やがて立つことで、一生を形づくる。
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