港に魚が並ぶとき、
その下には、すでに何層もの時間が積み重なっている。
漁業は、
網を入れた瞬間から始まるものではない。
魚が生まれ、育ち、
海に残るか、消えるかが決まる、
もっと前の段階から始まっている。
その最初の支えとなっているのが、
動物プランクトンである。
🦐 目次
🎣 1. 漁業の前にある世界
魚を獲るという行為は、
魚そのものだけを対象にしているように見える。
しかし実際には、
その魚が生き残ってきた過程すべてを引き受けている。
卵が孵り、仔魚となり、
自力で泳ぐ力を持たない時期。
この段階で、魚はほとんど選択肢を持たない。
流れに運ばれ、
出会った餌を食べ、
食べられずに済んだ個体だけが、
次の段階へ進む。
漁業の成否は、
この「選別」がどれだけ穏やかに行われたかに、
大きく左右されている。
🐟 2. 稚魚を育てる餌の層
多くの魚にとって、
最初の食事は動物プランクトンである。
とくに重要なのは、
餌の量だけではない。
大きさ、動き、出現するタイミング。
これらが少しでも噛み合わなければ、
稚魚は飢える。
- 小さすぎれば捕まえられない
- 大きすぎれば飲み込めない
- 遅すぎれば、すでに死んでいる
動物プランクトンは、
ただ存在すればよいわけではない。
「ちょうどよく、そこにいる」必要がある。
この微妙な一致が起きた年は、
数年後、豊漁として姿を現す。
📉 3. 不漁はどこから始まるのか
不漁が続くとき、
原因はしばしば人の行為に求められる。
獲りすぎ、管理不足、乱獲。
それらが事実である場合も多い。
しかし同時に、
もっと手前で崩れている層がある。
水温の変化、
流れのずれ、
植物プランクトンの不調。
それに引きずられるように、
動物プランクトンの組成が変わる。
餌が合わなかった世代は、
そのまま消えていく。
そして数年後、
「獲る魚がいない」という形で、
結果だけが現れる。
⚖️ 4. 見えない基盤と人の選択
動物プランクトンを、
直接守る漁業は存在しない。
彼らを管理する網も、
捕獲量の制限もない。
それでも、
影響を与えないわけではない。
沿岸環境の改変、
流域からの栄養流入、
水質の変化。
これらはすべて、
動物プランクトンの世界に届いている。
魚を守るという言葉の裏には、
魚よりも下の層を、
どれだけ想像できるかが問われている。
漁業とは、
見えない基盤の上で行われる、
非常に繊細な営みなのだ。
🌙 詩的一行
獲られる前に、すでに育てられていた。
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