🐢カメ17:人とカメの歴史 ― 共に生きてきた水辺の時間

カメシリーズ

― 人とカメの関わりは、思っている以上に長い。古代の貝塚からは食用にした跡が見つかり、寺院や集落の池には静かに甲羅を浮かべる影が描かれ、神話や儀礼では“安定”を象徴する存在として扱われてきた。人が水辺に暮らす限り、そこにはいつもカメの姿があった。

この章では、カメと人間の歴史的な関係を食・信仰・飼育・利用・保護という軸で見つめ、長い時間の中で変わり続けてきた“人とカメの距離”を整理する。

🐢目次

🥢 1. 食としての歴史 ― 古代貝塚から江戸の食文化まで

日本各地の縄文・弥生の遺跡(貝塚)には、カメの骨が多く見つかっている。川や湿地に多かった淡水ガメは、当時の人々にとって貴重な動物性タンパク源だった。

  • 縄文〜弥生:淡水ガメの骨が多数出土
  • 中世:寺領での利用記録も残る
  • 江戸期:スッポン料理が広がり、養殖も始まる

現在では漁獲や捕獲は大きく制限され、食文化としての扱いは小規模になっている。

⛩ 2. 信仰・儀礼とカメ ― 安定と長寿の象徴

カメは、長寿・不動・平穏の象徴として、神社・寺院・民間信仰に深く組み込まれてきた。

  • 神社の池:カメを放つ風習がある地域も
  • 寺院の庭:蓮池に甲羅が浮かぶ景観が定着
  • 郷土信仰:カメを“土地を守る存在”とする伝承

甲羅の六角形模様が、建築や工芸の文様として使われることも多い。

🏞 3. 飼育と身近な存在 ― 寺の池・庭園・地域の水辺

カメは「飼う」という行為が特別でなかった時代が長い。寺や庭園の池、農村のため池などで、ごく自然に共存してきた。

  • 寺の池:人の出入りが多く、餌をもらいやすい環境
  • 庭園:池泉庭園の生態系の一部として描かれる
  • 農村のため池:在来種の生活と地域文化がつながる場所

“飼育”というより、“共に暮らす生き物”として扱われてきたといえる。

⚖️ 4. 利用から保護へ ― 現代の見方の変化

近代になると、カメは徐々に「保全の対象」へと位置づけが変わっていく。

  • 乱獲の減少:資源としての利用が縮小
  • 外来種問題:アカミミガメの定着が大きな課題に
  • 環境保全:ため池の保全活動が在来種の支えになる
  • 保護活動:ウミガメの産卵地保護が全国で広がる

人とカメの距離は、「利用する」関係から、「守りながら共に暮らす」関係へと変わりつつある。

🌙 詩的一行

水辺に寄り添ってきた長い時間が、静かな甲羅の影にそっと残っている。

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