🐸 カエル13:ヒキガエル類 ― 土の匂いをまとった歩くカエル ―

カエルシリーズ

― 雨上がりの道を、ゆっくりと歩く丸い影。跳ねるのではなく、地面をしっかり踏みしめるその姿からは、どこか土の匂いが漂ってくる。ヒキガエル類は、カエルの仲間の中でもとくに陸上生活への適応が進んだグループで、重厚な体つきと落ち着いた行動が特徴的だ。

🐸目次

📘 基礎情報

  • 分類: ヒキガエル科
  • 代表種: アズマヒキガエル(Bufo japonicus)/ニホンヒキガエル(Bufo japonicus formosus
  • 分布: 本州・四国・九州(地域によって亜種が異なる)
  • 体長: 約7〜15cm(大型)
  • 食性: 昆虫・ミミズ・ナメクジ・クモなどの地表の小動物
  • 繁殖期: 2〜4月/池・ため池・水路へ集団で移動
  • 特徴: いぼ状の皮膚・遅い動き・毒腺(耳腺)を持つ

🐸 1. ヒキガエル類という存在

ヒキガエル類は、陸での生活に特化した力強いカエルだ。皮膚はいぼ状で乾燥に比較的強く、体もがっしりとしている。跳躍ではなく歩くように進む姿が特徴的で、ほかのカエルとは明らかに異なる存在感をもつ。

背中のいぼには毒腺があり、天敵から身を守る役割も兼ねている。土の色にとけ込む体色は、落ち葉に覆われた環境でよく目立たない。

🪰 2. 生態と行動

主な生活場所は地表で、湿った土の上や落ち葉の下で静かに過ごす。捕食は待ち伏せ型で、目の前を横切る小動物を素早く舌でとらえる。動きはゆっくりだが、獲物を捕らえる瞬間だけは非常に速い。

  • 夜行性で、夕方から活動が増える
  • 冬眠は地中に潜って行う
  • 繁殖期には集団で水辺へ移動する「ヒキガエル行列」が見られる

繁殖期の移動は地域の季節行事として知られることもあり、その行動自体が自然の暦のように扱われることもある。

🌿 3. 環境と分布

ヒキガエル類は日本の広い地域に分布し、平地から山地までさまざまな環境にすむ。湿った土壌があれば生活できるため、森林・農地・住宅地の周辺など幅広い場所で見られる。

  • 落ち葉の積もる林床
  • 畑や草地の縁
  • 石垣や家屋周辺の隙間

乾燥にそこそこ強い反面、繁殖だけは水辺が必要で、毎年同じ場所に戻る“帰巣性”をもつ地域個体群も知られている。

🔎 4. 観察のポイント

もっとも観察しやすいのは繁殖の季節。集団で池に向かう「行列」は圧巻で、夜の道路を横切る姿が見られることもある。普段は落ち葉の下などに隠れているため、夜間の散策や雨の日がねらい目だ。

  • 動きは遅いので観察しやすい
  • 目が金色で表情が豊か
  • 毒腺(耳腺)があるため触れ方に注意

🌙 詩的一行

しずかな土の匂いをまとった影が、夜の林床をゆっくり踏みしめていく。

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