― 雨上がりの道を、ゆっくりと歩く丸い影。跳ねるのではなく、地面をしっかり踏みしめるその姿からは、どこか土の匂いが漂ってくる。ヒキガエル類は、カエルの仲間の中でもとくに陸上生活への適応が進んだグループで、重厚な体つきと落ち着いた行動が特徴的だ。
🐸目次
📘 基礎情報
- 分類: ヒキガエル科
- 代表種: アズマヒキガエル(Bufo japonicus)/ニホンヒキガエル(Bufo japonicus formosus)
- 分布: 本州・四国・九州(地域によって亜種が異なる)
- 体長: 約7〜15cm(大型)
- 食性: 昆虫・ミミズ・ナメクジ・クモなどの地表の小動物
- 繁殖期: 2〜4月/池・ため池・水路へ集団で移動
- 特徴: いぼ状の皮膚・遅い動き・毒腺(耳腺)を持つ
🐸 1. ヒキガエル類という存在
ヒキガエル類は、陸での生活に特化した力強いカエルだ。皮膚はいぼ状で乾燥に比較的強く、体もがっしりとしている。跳躍ではなく歩くように進む姿が特徴的で、ほかのカエルとは明らかに異なる存在感をもつ。
背中のいぼには毒腺があり、天敵から身を守る役割も兼ねている。土の色にとけ込む体色は、落ち葉に覆われた環境でよく目立たない。
🪰 2. 生態と行動
主な生活場所は地表で、湿った土の上や落ち葉の下で静かに過ごす。捕食は待ち伏せ型で、目の前を横切る小動物を素早く舌でとらえる。動きはゆっくりだが、獲物を捕らえる瞬間だけは非常に速い。
- 夜行性で、夕方から活動が増える
- 冬眠は地中に潜って行う
- 繁殖期には集団で水辺へ移動する「ヒキガエル行列」が見られる
繁殖期の移動は地域の季節行事として知られることもあり、その行動自体が自然の暦のように扱われることもある。
🌿 3. 環境と分布
ヒキガエル類は日本の広い地域に分布し、平地から山地までさまざまな環境にすむ。湿った土壌があれば生活できるため、森林・農地・住宅地の周辺など幅広い場所で見られる。
- 落ち葉の積もる林床
- 畑や草地の縁
- 石垣や家屋周辺の隙間
乾燥にそこそこ強い反面、繁殖だけは水辺が必要で、毎年同じ場所に戻る“帰巣性”をもつ地域個体群も知られている。
🔎 4. 観察のポイント
もっとも観察しやすいのは繁殖の季節。集団で池に向かう「行列」は圧巻で、夜の道路を横切る姿が見られることもある。普段は落ち葉の下などに隠れているため、夜間の散策や雨の日がねらい目だ。
- 動きは遅いので観察しやすい
- 目が金色で表情が豊か
- 毒腺(耳腺)があるため触れ方に注意
🌙 詩的一行
しずかな土の匂いをまとった影が、夜の林床をゆっくり踏みしめていく。
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