絶滅のおそれのある野生動植物を守るための国際枠組み、ワシントン条約(CITES)。
その第20回締約国会議が、11月24日から12月5日にかけてウズベキスタンのサマルカンドで開かれる。
今回の会議では、キリン、ウナギ属、海ガメ類など、世界中で取引される生き物たちの未来が議論される。
“国際取引をどうコントロールするか”は、生息地そのものの保全と直結しており、単なる輸入・輸出の話ではない。
■ 会議で議論される生き物たち
議題には、以下の生物群の附属書改正案が含まれている。
- アフリカのキリン(個体数減少の加速)
- 国際市場で需要が高まるウナギ属
- 海ガメ・淡水カメ類(密猟・違法採取の増加)
- その他、装飾・ペット・薬用として取引される各種
これらは、一見遠い国の問題のように思える。しかし、森や川、海で起きている取引の歪みは、日本の暮らしとも静かに繋がっている。
■ “取引”と“生息地”は同じ場所で揺らいでいる
ワシントン条約が扱うのは「取引の規制」だが、本質はその先にある生息地の危機だ。
密猟、違法取引、森林伐採、気候変動――。どの問題も、生き物たちの背後で同時に進んでいる。
国家間の利害が複雑に絡み合う会議のなかで、どの種を守り、どの取引を制限するのか。
その判断が、未来の多様性を左右する。
■ 日本から見える“世界の保全”
日本政府は今回の会議に代表団を送り、附属書改正案や密猟対策について各国と議論する。
ウナギ類や海産種など、日本の消費や文化に深く関わる生物群も議題に含まれており、
“海の国”としての責任も問われる場になる。
生き物を守るための国際的な話し合いは、目立たないようでいて、世界の生態系にとって大きな節目だ。
サマルカンドの乾いた空気のなかで、静かにその未来が選ばれていく。
🌍 せいかつ生き物図鑑・世界編
― 変わりゆく地球を見つめる観察記 ―出典:環境省報道発表(2025年11月17日)/CITES Secretariat
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