🦚キジ12:繁殖と子育て ― 草原に残る足跡 ―

キジシリーズ

― 草むらの奥で、そっと聞こえる羽ばたきと小さな足音。キジの繁殖と子育ては、派手さとは無縁の、静かで確かな営みだ。巣は地面にあり、雛はすぐに歩き出す。大地に残る足跡が、季節の深まりを静かに知らせてくれる ―

キジは、地上性の鳥らしく「地面で巣をつくり、地面で育てる」。繁殖期には雄が大きな声で縄張りを示し、雌は草むらの中に巣を構え、子育ては母鳥がほとんどを担う。雛は生まれたその日から歩き、草の影に寄り添いながら季節のなかを育っていく。

🦚目次

📢 1. 鳴き声と縄張り ― 春を告げる雄の行動

繁殖期のキジの象徴が、雄の「ケーン!」という鳴き声だ。これは縄張りを示すための合図で、日の出前後によく響く。草地や畑の境界で姿勢を高くし、翼を打ちながら鳴く姿が見られる。

  • 雄が縄張りを宣言するための声
  • 繁殖期の春に最も多く聞こえる
  • 草むらや畑の縁で堂々と立つ姿が特徴

この声は、里山の春を告げる風景の一部になっている。

🌿 2. 巣づくり ― 草むらに隠された小さな場所

雌は、草むらの奥に浅いくぼみをつくり、枯草などを敷いて巣にする。地面に直接つくられる巣は外敵に見つかりやすいため、周囲の植物に溶け込むように置かれる。

  • 巣は“浅い皿状”の地上巣
  • 草の陰、畦道の脇、林縁など
  • 外敵に見つからない「静かな場所」を選ぶ

巣の存在を知られないことが、雛が育つための第一条件になる。

🥚 3. 卵と抱卵 ― 静かに続く母鳥の時間

産卵は1日1個ずつ、10個近く産むこともある。抱卵は雌が単独で行い、20日ほど体を離れずに温め続ける。雄は近くで縄張りを守るが、育雛には直接関わらない。

  • 卵はクリーム色〜淡黄褐色
  • 抱卵は完全に雌のみ
  • 外敵に気づかれぬよう、動きを最小限に抑える

母鳥の静かな時間が、季節の深まりと重なっていく。

🐥 4. 雛の成長 ― 生まれたその日から歩く

キジの雛は「早成性」で、生まれてすぐに歩き、餌をついばむことができる。母鳥は雛を率いて草地を移動し、虫の多い場所や日当たりのよい場所へ導いていく。

  • 孵化直後から自分で歩き移動できる
  • 初期は昆虫を中心に栄養をとる
  • 母鳥は群れの中心となり雛を守る

草原の小さな足跡は、母子の短い距離の旅の記録でもある。

🌙 詩的一行

草むらを行く小さな影が、里山の季節をそっと前へ運んでいく。

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