麦の茎は、細くて軽く、中心が空洞になっている。
この「中空構造」はイネ科の特徴で、草原の風を受けながらも、
しなやかに揺れて折れにくいという利点をもっている。
一方で、穂が実って重くなる季節には倒れやすくなる。
この倒伏性との向き合い方こそ、麦が長い栽培史の中で
もっとも改良されてきた部分でもある。
🕊️ 目次
🌾 中空構造という仕組み ― 軽さとしなやかさ
麦の茎は、中心が空洞になっている「中空茎」だ。
内部に無駄な組織を持たないことで軽く、
風を受けても曲がるだけで折れにくい。
草原の広い土地で風を利用して受粉する植物にとって、
この軽さとしなやかさは大きな利点だった。
重い茎を支えるよりも、風に合わせてしなう方が、
結果的に生き延びる確率が高かったのである。
🌿 節(ノード)の強さ ― イネ科が倒れにくい理由
中空の茎でも簡単に折れないのは、
ところどころにある節(ノード)が強く作られているためだ。
節は太く硬く、植物の「支点」として働いている。
麦がしなりながらも立ち上がるのは、
この節が全体をうまく支えているからだ。
乾燥して風の強い地域で進化した植物らしい構造である。
🌬️ 倒伏という課題 ― 収量を左右する重要な性質
麦が栽培化されると、穂はより大きく、粒は重くなった。
その結果、野生時代よりも倒伏しやすくなった。
・強風による倒伏
・大雨による倒伏
・粒が多く重くなりすぎることによる倒伏
倒伏すると、粒が濡れる・腐る・収穫量が落ちるなど
農家にとっては大きな課題になる。
そのため栽培化の歴史では、
「倒れにくい短い茎」や「節が強い系統」が選ばれ、
品種改良の重要な方向になっていった。
茎は、草原の植物としての姿と、栽培作物としての姿の
どちらも映し出している部分といえる。
🌙 詩的一行
細い茎は、風に合わせて揺れながらも、静かに穂を支えている。
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