南極へ向かう日本の目 ― 第67次南極地域観測隊と“氷の生き物たち”が直面する現在(2025年11月)

地方のNEWS

環境省が、第67次南極地域観測隊へ職員を同行させると発表した。
この知らせは、一見すると“毎年の恒例行事”のようにも思える。
だがその背景には、いま南極が抱えている深刻な変化がある。
日本が南極に向かう意味は、年々重くなっている。

日本の南極観測は、1956年に始まった。
越冬隊が氷の大陸に基地を築き、空を飛ぶオーロラ、
大陸を覆う氷床、氷の縁に集うペンギンやアザラシたち――
それらを記録してきた長い積み重ねがある。

かつて南極の海氷は「安定した存在」だと思われていた。
しかし近年、観測データはそれを否定する方向へ向かっている。
2023〜2024年の海氷面積は観測史上で最小レベルを記録し、
とりわけ冬の氷が戻らない現象が続いている。

海氷が減るということは、
氷の下でプランクトンを食べるオキアミが減り、
そのオキアミを食べるペンギン、アザラシ、クジラへと
連鎖的な影響が広がることを意味する。

例えば、近年の観測では、
コウテイペンギンの繁殖地のいくつかが
“海氷崩壊により雛が全滅”という事例を記録している。
氷の世界で生きる生き物にとって、氷は住まいであり保育所だ。
氷が消えれば、世代そのものが失われる。

こうした変化を捉えるため、南極観測隊には
大気・海洋・生態系の専門家たちが参加してきた。
今回の環境省職員の同行は、
生物多様性と気候の双方を読み解くための“目”を
より強化する意図がある。

南極は遠い世界だが、私たちの生活と無縁ではない。
海氷が溶ければ海流は変わる。
南極の冷水が生み出す海の循環が弱まれば、
魚の分布、海藻の成長、日本沿岸の生態系にも影響する。

日本の観測隊は、“地球規模の変化”の最前線に立っている。
その観測データは、国内の保全政策にも直結する。
海鳥の動向、海水温のゆらぎ、沿岸の魚種の変化――
そのすべてに、南極の変化が影を落としているのだ。

氷点下の風が吹く大陸を前に、
観測隊は今年も静かに準備を進めている。
氷の縁で生き物たちがどう暮らしているのか、
そして地球の循環がどこへ向かっているのか。
その問いに答えを出すために。

🌏 せいかつ生き物図鑑・国内編
― 日本から見る“地球のはしっこ”の自然記録 ―

出典:環境省報道発表(2025年11月10日)/南極観測隊資料/各年次観測レポート

🦐 南極海オキアミ漁倍増案

🦭 北極でもアザラシが減少しています

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