🍊ミカン2:木と実 ― 成長と季節のしくみ ―

ミカンシリーズ

― 枝の上で、季節は少しずつ形を変えていく ―

ミカンの木は常緑の果樹で、 一年を通して緑を保ちながら季節を進める。 春に花を咲かせ、夏に実を太らせ、 冬にかけてゆっくりと熟していく。 その周期は人の生活よりも静かで確かだ。


🍊目次


🌸 春 ― 花の季節

4月から5月にかけて、枝先に白い五弁花が咲く。 花の直径はおよそ2センチ。 一つの枝に複数の花がつき、 そのうちのわずかが果実になる。 香りにはミカン属特有の成分リナロールが含まれ、 昆虫を引き寄せて受粉を助ける。 開花から果実の形成までは約1か月ほど。


🌿 夏 ― 実の成長

6月から8月にかけて、果実は急速に大きくなる。 最初は深い緑色で、皮は厚く硬い。 細胞分裂が進むこの時期は、日照と水分が重要。 雨が続くと果実が水っぽくなり、 乾燥しすぎると小玉になりやすい。 農家は枝を間引き、葉の光合成を保ちながら 実の数と大きさを調整していく。


🍂 秋から冬 ― 熟す時間

秋の終わり、昼夜の温度差が大きくなると 果実の色が少しずつ変化し始める。 緑の色素クロロフィルが減り、 カロテノイドが増えて橙色になる。 酸味がゆるやかに減り、甘みが増す。 この糖酸比の変化が、冬の味をつくる。 収穫は11月から1月にかけて行われる。


🌳 枝と葉 ― 年を越える力

ミカンの木は、冬のあいだも葉を保つ常緑樹。 光合成は弱まるが止まらない。 寒風で葉が傷むと、春の花つきに影響するため、 農家は風よけや剪定で枝を守る。 実を収穫したあとの枝には、次の年の芽がすでにある。 一年が終わっても、木の中では次の季節が始まっている。


✒️ 詩的一行

枝の先で、時間は静かに形を変えていく。


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