― 黄金の体をもつ温海の旅人 ―
キハダマグロ(黄鰭鮪) ― 熱帯から温帯の海をめぐる回遊魚。黄金のひれと俊敏な泳ぎで知られ、マグロ類の中でも特に温海を象徴する存在。
📘基本情報
- 分類: スズキ目 サバ科 マグロ属(Thunnus albacares)
- 英名: Yellowfin Tuna
- 分布: 熱帯〜温帯の外洋域。太平洋・インド洋・大西洋の暖流帯に広く分布。
- 体長: 最大2.0m
- 体重: 最大200kg前後
- 寿命: 約6〜8年(成長が早く、3年で成熟)
- 食性: トビウオ・サバ類・イカ・甲殻類などを捕食。
- 生息環境: 表層〜中層を群泳し、日中は深場、夜は表層へ移動する日周回遊性。
- 漁法: 巻網・延縄・トローリング・一本釣りなど。世界のマグロ漁獲量の多くを占める。
- 保全状況: IUCNレッドリスト:Near Threatened(準絶滅危惧)。漁獲規制下で資源は比較的安定。
太陽の下を泳ぐマグロがいる。
その名はキハダ。
熱帯の海を黄金色に染める魚。
速さと群れを武器に、広い海を軽やかに渡る。
彼らは“海の光”のような存在だ。
🌱 姿 ― 光をまとう魚
体は細長く、流線形。
背びれと臀びれが鮮やかな黄色を帯び、
光を受けると金色に輝く。
それが「黄鰭(キハダ)」の名の由来だ。
体側の金線が波のように走り、
まるで太陽の一部が泳いでいるように見える。
🌿 行動 ― 群れとスピード
キハダは単独ではなく、大きな群れを作って泳ぐ。
トビウオやイルカと共に回遊することもあり、
群れ全体で潮流を利用して移動する。
その速度は時に時速60km。
一日のうちでも深場と表層を行き来し、
海の“時間”に合わせて動く魚だ。
🔥 繁殖と資源 ― 豊かさと危うさ
キハダは熱帯海域で通年産卵し、成長も早い。
この繁殖力の高さが豊富な漁獲を支えてきたが、
一方で過剰漁獲が懸念される地域もある。
各国が協定を結び、資源を見守りながら利用している。
“豊かであること”が、最も繊細な均衡で成り立つ魚だ。
⚓ 人との関わり ― 食卓のマグロ
キハダは世界中で食べられているマグロ。
日本では刺身・丼・缶詰などに多く使われ、
「日常のマグロ」として親しまれている。
肉質は赤身が中心で、脂は少なめ。
その軽やかな味わいは、海の太陽を思わせる。
🌙 詩的一行
光を追い、群れの影の中で、海は金色に息づく。
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