🐗イノシシ8:猪肉文化

イノシシシリーズ

― ボタンの花を食む ―

冬の鍋の湯気に、山の匂いが混ざる。
脂の甘さと土の香り。
ボタンの花のように並べられた肉片は、
狩りの記憶と季節の祈りを一緒に煮込んでいる。


🌾目次


🌱 猪肉 ― 山の恵みとして

イノシシの肉は古くから「山の幸」と呼ばれた。
脂は濃く、火を入れると香ばしい甘みが立つ。
冬、山の実を食べて太った個体ほど旨いとされ、
狩猟期の終わりには集落の宴が開かれた。
それは単なる食事ではなく、
山の命を分かち合う感謝の儀式だった。


🌿 ボタン鍋 ― 形と名の由来

薄切りの猪肉を皿に並べたとき、
赤と白の層が牡丹の花のように見える。
そこから「ボタン鍋」の名が生まれた。
味噌仕立ての出汁に山菜や根菜を入れ、
肉をくぐらせると、脂が湯に溶けて丸みを帯びる。
鍋の中で、冬の森が静かに息づく。


🔥 郷土 ― 各地に残る味

丹波・丹後・美山・十津川――猪肉を誇る土地は多い。
それぞれの地域で味付けや具が違う。
味噌の濃さ、酒の香り、山菜の種類。
寒い季節の食卓で、家族や仲間と囲む鍋には、
いつも“山をいただく”という意識があった。
狩猟が減った今でも、
ボタン鍋は冬を知らせる風物詩として受け継がれている。


🌙 詩的一行

熱い鍋の湯気の中に、山の息が立ちのぼる。


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