- 分類: ミカン科ミカン属
- 学名: Citrus sudachi(スダチ)/Citrus sphaerocarpa(カボス)
- 分布: スダチ:徳島県を中心に四国地方。カボス:主に大分県。
- 樹高: 約2〜4m(ユズより小型)
- 果実: スダチは直径4cm前後の球形、カボスはやや大きめ。いずれも青い果実を若採りして使用。
- 香り成分: リモネン、γ-テルピネン、シトラールなど。ユズより酸味が強く爽快。
- 特徴: ユズと同じ香気系統に属するが、酸味・香りともに鋭く、果汁が豊富。
- 用途: 酢の代用、薬味、鍋料理、焼魚、飲料、菓子加工。
生態 ― 近縁種としての違い
スダチとカボスはいずれもユズに近い香気成分をもちながら、 異なる地域で独自に進化・栽培されてきた柑橘である。 スダチはミカン科ミカン属の中で、 ユズと同じくキシュウミカン系統との自然交雑由来と考えられ、 果皮の香りが高く酸味が鋭い。 一方、カボスは九州を起源とする酸味柑橘で、 果汁が多く、酸味が穏やかで丸みのある香りをもつ。
スダチの香気成分はγ-テルピネンとリモネンが主体で、 果皮をこするとすぐに香りが立つ。 カボスはシトラールを多く含み、 柑橘の中でも特に清涼感のある香りが特徴だ。 いずれも耐寒性はユズほど強くないが、 果実は早熟で、初秋から青い実を収穫する。
文化 ― 酸味の地域文化
スダチは徳島県の特産であり、「すだち酢」として全国に知られる。 焼魚や鍋、冷奴などに添えられる爽やかな酸味は、 ユズよりも鋭く、料理の香りを引き締める。 その香気は土地の食文化そのものであり、 徳島では「秋の香り」として親しまれている。
カボスは大分県の県木・県花でもあり、 「カボスを搾る文化」は県民の日常に深く根づいている。 味噌汁やサンマ、焼き肉、焼酎にも添えられ、 ユズの香りが“冬の香り”であるのに対し、 カボスは“夏から秋の香り”として対比される。 両者はユズの親戚として、それぞれの土地で 酸味の文化を育ててきた果実である。
詩 ― 酸のきらめき
青い果実をひと搾りすると、 空気がきりりと澄んでいく。 夏の終わり、台所の光の中で、 酸の香りが季節を区切る。 その一滴に、土地の時間が宿っている。
コメント