🍋ユズ7:ユコウ ― 柔らかな香りの系統 ―

ユズシリーズ
  • 分類: ミカン科ミカン属
  • 学名: Citrus junos(平柚子系統)/Citrus yuko(ユコウ)
  • 分布: 主に徳島県・高知県・愛媛県など四国地方
  • 樹高: 約3〜4m
  • 果実: ユコウはやや小型で丸い。香り柔らかく酸味穏やか。
  • 香り成分: リモネン、リナロール、ネロリドール、γ-テルピネン
  • 特徴: 柚子の香りを残しつつ酸味がやわらかく、食用・加工向けに適する。
  • 用途: 果汁・調味料・菓子・地域特産品・飲料

 生態 ― 柔らかな香りをもつ系統

ユコウ(ゆこう)は、徳島県南部から高知県にかけての 山地に古くから自生していた柑橘で、 ユズとダイダイの自然交雑種と考えられている。 果汁が豊富で酸味がまろやか、 香りはユズに似ていながら、少し柔らかい印象を持つ。 冬に実が黄色く色づく様子は、 山の柚子のもう一つの姿を思わせる。


 文化 ― 山と台所をつなぐ果実

ユコウは 「酸味をやわらかく、香りを穏やかに」という 人々の生活から生まれた系統である。 徳島県の郷土料理に欠かせない果汁として知られ、 刺身や鍋物に使われるほか、ユコウ酢として瓶詰めでも販売される。 その酸味はユズより控えめで、料理を優しくまとめる。

“香りの系譜”の中で、この果実は 暮らしに寄り添う“やさしいユズ”として位置づけられてきた。


 詩 ― やわらかな酸の記憶

風にゆれる枝に、小さな実が光る。 指先でふれると、香りは静かに広がる。 酸味がやわらかく、心までやさしくなる。 それは山の果実が、暮らしの中に溶けていった 長い時間の香りなのだろう。


🍋→ 次の記事へ(ユズ8:スダチ・カボス ― ユズの親戚たち ―)
🍋→ ユズシリーズ一覧へ

コメント

タイトルとURLをコピーしました