🎋 ウナギ6:生活史③ クロコから成魚 ― 淡水で育つ長い時間 ―

ウナギシリーズ

河口を越えたシラスウナギは、淡水へ足を踏み入れると同時に体色を変化させる。透明だった体は徐々に黒みを帯び、やがてクロコと呼ばれる幼魚の姿になる。ここから先は、外洋の漂流とはまったく違う時間が始まる。流れの緩やかな川や湖、湿地など、淡水域での成長こそがウナギの生活史の中心となる。

淡水で暮らす期間は数年から十年以上と長く、個体によって大きく異なる。環境の豊かさ、餌の量、水温の変化などが、その成長速度に影響する。外洋の世界で受動的に漂っていた段階を終え、ウナギは自らの動きと選択によって生きる場所を決めていく。

クロコから成魚への変化は緩やかで、外見は次第にウナギらしい黒褐色の体へと変わっていく。夜行性の生活がより強まり、昼は石の下や葦の根元で身を潜め、夜になると静かに餌を探しに動き出す。

🎋目次

🌿 1. クロコ期の開始 ― 透明な稚魚から黒い幼魚へ

淡水へ入った直後、シラスウナギは体色を濃くし始める。透明だった体は黒みを帯び、保護色としての効果が高まる。これがクロコ期の始まりだ。

  • 体色変化:黒褐色への変化は、光の弱い水底で身を隠すための適応。
  • 体形の発達:筋肉が増え、泳ぎが力強くなる。
  • 環境への馴化:淡水での浸透圧調整能力が本格的に働き始める。
  • 行動の変化:隠れる時間が増え、夜に活動が集中する。

この段階で、外洋とは異なる淡水の世界へ完全に“居場所”を移すことになる。

🏞️ 2. 淡水での生活環境 ― 川・湖・湿地で育つ理由

ウナギが淡水で長く暮らすのは、安定した成長の場がそこにあるためだ。川や湖は外洋に比べて栄養が豊富で、餌となる生き物も多い。

  • 川の多様性:流れの強弱、深み、浅瀬が混在し、個体の好みで“居付き場所”を選べる。
  • 湖や池:流れが穏やかで、甲殻類や小魚が豊富。
  • 湿地:泥底に潜り、掘る行動がしやすい。
  • 水温:季節変動が大きく、成長のメリハリが生まれる。

こうした多様な環境は、ウナギが広い範囲で生活できる理由でもある。

🍽️ 3. 食性と成長 ― 夜に動き出す捕食者としての素質

クロコから成魚にかけて最も変化するのは、食性と行動だ。ウナギは雑食傾向を持つが、夜間には活発な捕食者となる。

  • 主な餌:甲殻類、貝類、虫、小魚、落ちた有機物など。
  • 夜行性:暗い時間帯に餌を探し、昼間は物陰に潜む。
  • 嗅覚の強さ:濁った水で餌の位置を正確に把握できる。
  • 成長速度:環境と餌の量によって年単位で差が出る。

淡水で十分に栄養を蓄えた個体だけが、やがて海へ戻る力を備える。

🔎 4. 成魚への道 ― 長い時間が形づくる成熟の過程

ウナギは淡水で数年から十年以上を過ごし、十分に成長した個体は海へ戻る準備を始める。体色が銀色を帯び、目が大きくなるなど、外洋に適応した「降海型」の姿への変化が進む。

  • 銀化:体色が銀白色になり、光に対する保護効果が高まる。
  • 目の拡大:外洋の暗さに対応するため、眼が大きくなる。
  • 消化器官の退縮:産卵に備え、長距離移動に特化した体へ。
  • 移動本能:成長とともに、外洋へ戻る本能が高まり、降海の時期を迎える。

こうして淡水で育ったウナギは、再び海へ旅立つ力を身につける。

🌙 詩的一行

静かな川底で、黒い影がゆっくりと力を蓄えていく。

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