ウメの一年は、他の木より少し早く動き出す。冬のあいだ、枝は何も語らないように見えるが、その内側では、春に向けた準備がすでに始まっている。
花が咲くのは偶然ではない。寒さを経て、芽が目覚め、受粉し、実を結ぶ。その一連の流れは、ウメという木が長い時間をかけて選び取ってきた生活のかたちだ。
この章では、ウメが一年をどのように過ごし、どの時点で何を行っているのかを、時系列で見ていく。
🌸 目次
❄️ 1. 冬の休眠 ― 花芽を守る時間
ウメは秋の終わりに葉を落とし、休眠期に入る。この時期、枝先にはすでに翌春の花芽が形成されている。
- 状態:落葉・休眠。
- 花芽:前年に形成。
- 必要条件:一定期間の低温。
- 役割:開花準備。
十分な寒さを経験しないと、花芽は正常に目覚めない。ウメにとって冬は避けるものではなく、必要な季節だ。
🌸 2. 開花 ― 寒さの中で咲く
冬の低温を経た花芽は、気温の上昇とともに一気に動き出す。葉が出る前、枝だけの状態で花が開く。
- 時期:1〜3月。
- 順序:花→葉。
- 特徴:香りが強い。
- 役割:昆虫を引き寄せる。
競合する花が少ない時期に咲くことで、限られた受粉者を効率よく確保できる。早咲きは、ウメの大きな賭けであり、強みでもある。
🐝 3. 受粉と結実 ― 実を残す瞬間
開花後、受粉が成功すると、花の基部が膨らみ、実の形成が始まる。
- 受粉:昆虫媒介。
- 性質:自家不和合が多い。
- 結実:品種間受粉が有利。
- 脱落:自然落果も多い。
すべての花が実になるわけではない。余分な実を落とし、残ったものに栄養を集中させることで、質の高い果実を育てる。
🍃 4. 実の成熟 ― 夏に向かって
春から初夏にかけて、実はゆっくりと肥大し、内部に酸を蓄えていく。
- 成長期:春〜初夏。
- 果実:硬く酸性。
- 収穫:青梅〜完熟。
- その後:葉は光合成を続ける。
実が収穫された後も、葉は夏のあいだ光合成を行い、翌年の花芽形成に備える。ウメの一年は、次の春へと静かにつながっている。
🌙 詩的一行
冬を越えた記憶が、花となり、実となって残る。
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