ウメの花が終わったあと、人はその木を見捨てなかった。実を拾い、漬け、干し、保存する。ウメは、咲いて終わる花木ではなく、使われ続ける木になった。
実梅品種は、観賞よりも結実の確実さと実の性質が選ばれてきた系譜だ。酸味、硬さ、保存性。それらは偶然ではなく、長い選抜の結果である。
この章では、梅干しや梅酒の原料となる実梅品種の特徴と役割を見ていく。
📌 図鑑の基礎情報
- 分類:バラ科サクラ属(Prunus)
- 区分:実梅品種
- 主な用途:梅干し、梅酒、加工保存
- 分布:日本各地(特に紀州など)
- 開花期:2〜3月
- 結実・収穫:5〜6月
- 特徴:果実が大きく、酸味が強い
- 見分けポイント:実の大きさ、果肉量、結実の安定性
🌸 目次
🥭 1. 実梅品種とは何か
実梅品種とは、果実の利用を目的に改良・選抜されてきたウメの系統を指す。
花の華やかさよりも、毎年安定して実を結ぶこと、加工に耐える果実をつけることが重視されてきた。
🍶 2. 実の特徴 ― 加工に向く理由
実梅の果実には、加工に適した共通の特徴がある。
- 果実:中〜大型
- 果肉:厚く、崩れにくい
- 酸味:非常に強い
- 種:比較的小さい
これらの性質により、塩漬けや酒漬けでも形が保たれ、長期保存が可能になる。
🗾 3. 代表的な実梅品種
日本各地で、用途や気候に合わせた実梅品種が育てられてきた。
- 南高梅:大粒・果肉が厚い
- 古城梅:結実が安定
- 白加賀:関東で多い
- 甲州小梅:小粒・漬物向き
地域と暮らしに応じて、品種が選ばれてきたことがわかる。
🔎 4. 実梅が選ばれ続けた理由
実梅品種は、保存という人の知恵と深く結びついてきた。
- 保存性:長期保存が可能
- 栄養:有機酸が豊富
- 安定:毎年収穫できる
- 文化:食と健康の両立
実梅は、花の美しさの先にある「使う」という価値を、今も静かに支えている。
🌙 詩的一行
花が終わっても、役目は続いていた。
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