🌿 チャノキ3:茶の品種 ― やぶきたから在来まで

チャノキシリーズ

【分類】ツバキ科ツバキ属 チャノキ(品種・系統)
【主要品種】やぶきた/さえみどり/ゆたかみどり/おくみどり/つゆひかり ほか
【在来種】地域で自然交配を重ねた実生(みしょう)群
【特徴】品種ごとに芽の時期・香り・耐寒性・収量などが異なる
【用途】煎茶・玉露・かぶせ茶・紅茶など、適性が分かれる
【シェア】日本の茶園の約7割が「やぶきた」


― 同じチャノキでも、芽吹きの速さも、香りの方向も、土地との相性も違っている ―

チャノキは一種だが、茶畑に植わっている木はすべて同じではない
日本の茶文化は「品種」によって大きく形づくられてきた。
最も広く栽培される「やぶきた」を軸に、地域ごとに多様な品種が育っている。


🌿目次


🌱 茶の品種とは ― 何が違うのか

茶の「品種」とは、味・香り・芽吹きのタイミング・寒さへの強さなど、
系統ごとの性質を固定したチャノキのことだ。

・収量が多いもの
・寒さに強いもの
・香りが華やかなもの
・早く芽が出る「早生(わせ)」のもの
・紅茶に向くもの

同じチャノキでも、畑が違えばまったく別の香りを生む。


🍃 やぶきた ― 日本の標準になった理由

やぶきた(藪北)は、日本の茶園の約7割を占める代表品種だ。
静岡の茶農家が偶然見つけた優良個体をもとに広まった。

  • 香りと渋みのバランスが良い
  • たくさん採れる(収量が安定)
  • 寒さに比較的強い
  • 煎茶から玉露まで幅広く使える

“標準”である理由は、実は「万能で破綻がない」からだ。


🌤 主要品種の特徴 ― 香り・芽の時期・土地との相性

主要品種には、それぞれくっきりした個性がある。

  • さえみどり:旨味が強く、鮮緑で上品
  • ゆたかみどり:南九州向き。芽が早く、香りも力強い
  • おくみどり:芽吹きが遅く、品質安定
  • つゆひかり:香り爽やか。新興で人気上昇
  • べにふうき:紅茶向き。発酵との相性◎

土地と品種の相性は非常に大きい。 標高・霧・土質が違えば、香りの方向も変わる。


🌾 在来種とは ― 土地ごとの「無数の個性」

在来種とは、地域で自然交配をくり返し、実生で広がった茶園のこと。 同じ畑でも一本一本、香りも芽の時期も違う。

・多様で奥行きのある香味
・“その土地だけの茶”になりやすい
・商業効率は低いが、個性は群を抜く

日本の古い茶畑は、もともとほとんどが在来種だった。


🧪 品種と香味の関係 ― 成分と製茶適性

品種が変わると、成分比も変わり、香りの方向性も大きく変わる。

  • テアニンが多い → 旨味が強い
  • カテキンが多い → 渋み・爽やかさ
  • 香気成分の差 → 火入れ後の香りが変わる
  • 芽の柔らかさ → 高級茶向きかどうかが決まる

“お茶の味”は、畑に植わる木そのものの性質で決まる。 品種を知ることは、茶への理解を深める近道だ。


🌙 詩的一行

同じ畑に立つ木々の葉が、それぞれ違う香りのゆくえを秘めている。


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