🕊️ トンボ11:クロスジギンヤンマ ― 深緑の羽を持つ影 ―

トンボシリーズ

水面の上をすべるように巡回する緑の影。
一瞬近づいたとき、胸の黒い筋が光を裂くように走る。
森と水面のあいだを行き交うその姿は、
静けさの中に強さが宿るようだ。

それがクロスジギンヤンマ
ギンヤンマによく似ているが、胸の黒条(クロスジ)が決定的な特徴だ。

■基礎情報(クロスジギンヤンマ)
・分類:トンボ目 ヤンマ科 ギンヤンマ属
・学名:Anax nigrofasciatus
・分布:本州〜九州(温暖な地域に多い)
・体長:約7.5〜9.5cm
・主な生息環境:森近くの池・沼・樹林帯の水面
・成虫の出現期:初夏〜秋


🕊️ 目次


🌿 姿と色 ― 胸の黒条と深い緑の体

クロスジギンヤンマは、胸部に縦に走る黒い筋(クロスジ)が入る。
これがギンヤンマとの最大の違いであり、光の角度でくっきりと浮かび上がる。

体は深い緑色で、腹部には青い帯が穏やかに続く。
暗い水辺でも存在感があり、緑の影がふわりと動くように見える。


🏞️ 飛び方と性質 ― 森と水辺を結ぶ巡回者

飛翔は力強く、緩やかな弧を描きながら水面を巡回する。
縄張り意識が強く、他の大型トンボが近づくときびきび追い払う。

夕方や、森の影が伸びる時間帯に姿を見かけることが多く、
薄い光の中で緑と黒が溶けるように揺れるのが印象的だ。


🌲 暮らす場所 ― 樹林帯の池に強い理由

クロスジギンヤンマは、森のそばの池や沼でよく見られる。
木陰が多い環境でも活動できるのは、体温調整が上手で、
ヤゴが隠れる落ち葉や枝の多い場所を好むためだ。

人の手の入った公園よりも、
自然度の高い水辺で姿を見せることが多い。


🥚 産卵と生活史 ― 落ち葉の積もる水底で育つヤゴ

メスは水草や枝に卵を産みつける。
卵は水底に落ち、落ち葉の積もる環境でヤゴが育つ。
大きな体になるため、成長には時間がかかる。

羽化の時期は初夏〜盛夏。
湿った殻を抜けると、深い緑の影が水面へと広がっていく。


🌙 詩的一行

緑の影は、森の光をすくい上げるように静かにめぐっていた。


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