🏞 地方5:空の知らせ ― 渡り鳥が早く来た秋

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🏞 せいかつ生き物図鑑・地方編
― 四季をめぐる観察記 ―

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北の風が変わるとき(2025年10月29日)

10月の空が、少し早く冬を運んできた。
秋田、新潟、山形――
シベリアから渡ってくるマガンやハクチョウの群れが、
例年より1週間ほど早く姿を見せた。
白い翼が朝の光を受け、田んぼの上をゆっくりと旋回していく。

地元の観察員によると、
今年は北の気温が早く下がり、
シベリア方面では氷点下の日が例年より多いという。
それが渡り鳥たちに「出発の合図」を送ったらしい。
気象衛星のデータでも、
北極圏の冷え込みが数年前より長く続いていることがわかっている。

渡り鳥にとって、季節は暦ではなく「風の匂い」だ。
空気の湿り気、雲の高さ、日の長さ――
そのどれもが、旅の時を知らせるサインになる。
彼らはカレンダーを持たない。
それでも数千キロの空を越え、
ほとんど同じ場所へ帰ってくる。

人はその光景を“早すぎる秋”と呼ぶ。
けれど鳥たちにとっては、
それが“正しい季節”なのかもしれない。
地球の温度が少しだけ変わり、
風の流れがわずかにずれたその瞬間、
空の記憶が書き換えられる。

稲刈りの終わった田んぼに降り立つ群れ。
翼の音と一緒に、
北の冷たい空気が地面に触れる。
それは冬の始まりを告げる声でもあり、
季節を生きる命たちの確かな足跡でもある。

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