海の向こうから届く荷物のなかに、
小さな赤い影がひそむ。
名前はヒアリ(Solenopsis invicta)。
南米原産の侵略的外来アリだ。
環境省は11月7日、
国内でヒアリを探知できる犬の育成事業を始めると発表した。
対象となるのは、港湾・物流拠点などで働く訓練犬。
鼻の力を使って、ヒアリの巣や群れを探り当てる。
この試行では、民間の訓練施設が協力し、
実際の貨物や土壌を用いて探知精度を高めていく。
目的は「探知犬育成マニュアル(仮称)」の作成と、
定着防止に向けた新たな水際体制の確立だ。
ヒアリは2017年以降、
国内の港や倉庫で繰り返し確認されてきた。
刺されると激しい痛みを伴い、
生態系にも深刻な影響を及ぼす。
その侵入を防ぐ最前線に、
いま“犬の嗅覚”が加わろうとしている。
港の朝。
潮の匂いの中に、かすかな警戒の息づかいがある。
探知犬の鼻先が風を読み、
見えない敵の気配を追う。
それは、人と動物が力を合わせて守る、
この島国の静かな防壁だ。
🌏 せいかつ生き物図鑑・国内編
― 季節のいきものと暮らしをめぐる観察記 ―出典:環境省報道発表(2025年11月7日)/ヒアリ探知犬育成試行事業 概要資料
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