タコは、体を動かさずに姿を変える。
岩の色、砂の粒、海藻の影。その場にある要素を取り込み、風景の一部になる。気づいたときには、そこに「いない」ように見える。
タコの変色や擬態は、単なる保護色ではない。皮膚そのものが、外界とやり取りする装置として機能している。
🐙 目次
🎨 1. 色を変えるしくみ ― 色素胞の働き
タコの皮膚には、色素胞と呼ばれる細胞が分布している。
- 色素胞:色を含む細胞
- 種類:黒・赤・黄など
- 役割:体色の変化
色素胞は、広がったり縮んだりすることで、見える色を変える。複数の色素胞が重なり合い、微妙な色合いを作り出す。
この仕組みにより、タコは背景に近い色を瞬時に再現できる。
🪨 2. 形まで変える ― 皮膚の凹凸と質感
タコの擬態は、色だけにとどまらない。
- 皮膚:柔らかく可変
- 突起:立てたり寝かせたりできる
- 効果:質感の再現
岩のごつごつした表面や、海藻のざらつきまで再現することで、立体的に周囲へ溶け込む。
平面的な色合わせではなく、形を含めた擬態が行われている。
⚡ 3. 一瞬の変化 ― 神経による制御
タコの変色は、光や時間に左右される反応ではない。
- 制御:神経系
- 速度:瞬時
- 目的:対応と判断
目で見た情報が神経を通じて皮膚に伝わり、ほぼ同時に色や模様が変化する。
これは、環境の変化に即応するための仕組みだ。
🗣️ 4. 擬態は言語か ― 伝えるための変色
タコの変色は、隠れるためだけに使われるわけではない。
- 警告:目立つ色を出す
- 威嚇:模様を強調
- 交流:他個体への合図
ヒョウモンダコのように、強い色で危険を知らせる例もある。
皮膚の変化は、外界に向けた「表現」としても機能している。
🌙 詩的一行
語らずに、姿で応えてきた。
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