🐙 タコ14:メンダコ ― 深海を漂うやわらかな生 ―

メンダコは、これまで見てきたタコとは、まったく違う姿をしている。

腕は短く、体は丸く、ひらひらとした膜に包まれている。岩に張りつくことも、獲物を力で押さえ込むこともない。

深海という環境の中で、速さや強さを手放し、「漂う」という生き方を選んだタコ。それがメンダコだ。

🔎 基礎情報

  • 和名:メンダコ
  • 英名:Dumbo octopus
  • 学名:Grimpoteuthis spp.
  • 分類:軟体動物門/頭足綱/八腕形目/メンダコ科
  • 分布:世界中の深海
  • 主な生息環境:水深1,000m以深の深海底
  • 体サイズ:外套長10〜30cm前後(種差あり)
  • 食性:小型甲殻類・多毛類など
  • 繁殖:深海型(詳細不明な点が多い)
  • 寿命:未解明(比較的長い可能性あり)
  • 人との関わり:深海調査で観察される存在

🐙 目次

🌑 1. 深海という環境 ― 光の届かない世界

メンダコが暮らすのは、太陽光が完全に失われた深海だ。

  • 光:ほぼゼロ
  • 水温:低温で安定
  • 圧力:非常に高い

この環境では、速く動くことも、長距離を移動することも効率が悪い。

深海は、「省エネルギー」が最優先される世界だ。

🪽 2. ひらひらと泳ぐ ― 漂う移動様式

メンダコは、腕の間にある膜と耳のようなヒレを使って移動する。

  • 移動:ゆっくりとした羽ばたき
  • 速度:非常に遅い
  • 特徴:水流に身を任せる

力強く泳ぐのではなく、浮力と水流を利用して漂う。

それが、エネルギーを使い切らないための選択だ。

🍽️ 3. 捕食のしかた ― 力を使わない食事

メンダコの獲物は、小さく、動きも緩やかだ。

  • 獲物:甲殻類・ゴカイ類
  • 方法:包み込むように捕らえる
  • 毒:強力なものは持たない

待ち伏せというより、漂いながら出会ったものを取り込む。

深海では、そのほうが確実だ。

🧠 4. 別の賢さ ― 深海型の生き方

メンダコは、これまで見てきたタコの「賢さ」とは異なる。

  • 行動:単純で無駄がない
  • 判断:環境に逆らわない
  • 戦略:存在し続けること

何かを解決する知能ではなく、環境に溶け込む知恵。

それもまた、ひとつの高度化だ。

🌙 詩的一行

何もしないことが、生き残る方法になった。

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