🦗鈴虫19:音の終わり、季節のはじまり

― 終わりは静かに、始まりの中に ―


🗂目次


🍂終わりの音

十一月の夜。
鈴虫の声はもう、ほとんど聞こえない。
ひとつ、ふたつ、
遠くで途切れるように鳴いている。

それでも、その最後の音が
季節の幕を静かに閉じる。

終わりの音は、
いつも穏やかで、
どこか優しい。


🌙沈黙という季節

やがて森は沈黙に包まれる。
雪が降り、風の音だけが残る。

けれど、その静けさの中にも
“音の記憶”が潜んでいる。

鈴虫の声が消えた夜に、
人は初めて「静けさの音」を聴く。
それが冬の始まりの合図。


🌱土の中の時間

春までのあいだ、
土の中では卵が眠っている。
冷たい時間をくぐり抜け、
やがて光に触れるその日を待って。

音は消えたようでいて、
命は続いている。

沈黙の中で育つ季節。
それが、自然のリズムだ。


💫新しい声へ

春になれば、また命が動き出す。
そして夏の終わりに、
新しい鈴虫が声を上げる。

その音は去年とは違うけれど、
どこか懐かしい。

終わりの中に始まりがあり、
静けさの中に音が生まれる。

鈴虫の声は、
季節そのものの呼吸なのだ。


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