🐦スズメ12:若鳥と換羽 ― 羽が語る一年の変化

スズメシリーズ

― スズメの一年は、外からは分かりにくい小さな変化の積み重ねでできている。 春に巣立った若鳥は柔らかい幼羽をまとい、夏には少しずつ大人の模様へと近づき、 秋には大きな換羽で羽をすべて更新する。冬の冷たい空気を越えるために、 ふくらんだ羽の奥には静かな体温が宿っている。

ここでは、若鳥の成長と換羽の一年を見つめながら、 “町のスズメ”の中に隠れている繊細な季節の気配をたどっていく。

🐦目次

🌱 1. 若鳥の姿 ― 巣立ちから夏へ

巣立ったばかりの若鳥は、成鳥とは少し違う柔らかな印象を持っている。

  • 黄色い口角(イエローフランジ): 親鳥への餌乞いで目立つ特徴
  • 淡い色味の羽: 幼羽は全体にくすんだ茶色で、模様があいまい
  • ふっくらした体つき: 巣立ち直後の保温のため
  • 行動: 親鳥を追い、小さく鳴きながら餌をねだる

夏の間に少しずつ羽が大人へ近づき、 体つきも締まり始めるが、まだ「こどもの顔」を残している。

🍂 2. 秋の換羽 ― 羽毛が語る“更新”の季節

スズメは秋になると、ほぼ全身の羽を入れ替える大換羽を迎える。

  • 摩耗した羽の交換: 夏までにすり減った羽をすべて更新
  • 順序のある換羽: 飛翔に支障が出ないよう、左右対称に羽が抜ける
  • 栄養状態の影響: 都市型・自然型で換羽の進行に差が出ることも
  • 新羽の色味: 頭部の模様がくっきりし、胸の色が整う

換羽中のスズメはやや動きが慎重になることが多く、 羽の隙間から新しい羽軸がのぞく姿は、季節の深まりを感じさせる。

❄️ 3. 冬羽の役割 ― 寒さを越える小さな工夫

冬を迎えると、スズメは羽でふっくらと体を包み込み、 冷え込みに備える。

  • 体温保持: 空気の層を作り、熱を外に逃がさない
  • 羽の油分: 雨や雪を弾き、体温の低下を防ぐ
  • 群れの密集: 寒夜には仲間と寄り添いながら体温を分け合う
  • 冬羽の色: やや淡く、柔らかな印象になる

冬の朝、街角で膨らんだスズメを見ると、 その羽の一枚一枚が“冬を越えるための道具”であることが分かる。

🔍 4. 若鳥と成鳥の見分け方 ― 観察のポイント

若鳥と成鳥の違いは、意外と多くの場所に現れる。

  • 顔の模様: 若鳥は頬の黒斑が薄く、境界が曖昧
  • 胸の色: 若鳥は淡く、成鳥はやや濃く整う
  • 羽の質感: 若鳥はふわっとし、成鳥はすっきりとする
  • 行動: 若鳥は慎重で、親鳥の後ろをついていく場面が多い

慣れてくると、街角のスズメでも “今年生まれた子”と“何年も街で生きてきた成鳥”の区別がつくようになる。

🌙 詩的一行

羽の奥に宿るぬくもりが、季節の気配をそっと運んでいく。

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