🐦スズメ10:ニュウナイスズメ ― 森の縁に暮らす小さな仲間

スズメシリーズ

【ニュウナイスズメ(Passer rutilans) 基礎情報】
分類:鳥類 → スズメ目 → スズメ科 → スズメ属
学名:Passer rutilans
英名:Russet Sparrow
分布:日本(本州〜九州の山間部・里山)/中国・東南アジア
体長:約14cm
体重:15〜20g
食性:雑食(草の実、昆虫、小さな果実など)
繁殖:主に春〜夏/樹洞(キツツキ跡など)を好む
識別:オスは頭部が赤褐色/頬に黒斑がない/スズメより細身
生息環境:森林・林縁部・里山の農地/人家周辺には少ない

― スズメによく似ているのに、出会う場所が静かに違う鳥がいる。 街中では滅多に姿を見せず、里山の縁や雑木林のそばで、枝から枝へ軽やかに移る小さな影。 それが ニュウナイスズメ(Passer rutilans) だ。

スズメほど人の生活圏に強く依存せず、“木”を中心とした環境で暮らす。 同じスズメ属でありながら、生活の選択は大きく異なる。 ここではその違いと、ニュウナイスズメの独自の生き方を見ていく。

🐦目次

🌳 1. 分類と位置づけ ― スズメ属のもう一つの代表

ニュウナイスズメはスズメ属(Passer)の鳥で、 生息域はアジアの山間部・森林帯に広がる。

  • 学名: Passer rutilans
  • 分布: 日本(本州〜九州)、中国、モンゴル、東南アジア
  • 位置づけ: スズメと同じ属だが、生活圏は林縁中心

「町の鳥=スズメ」「森の縁の鳥=ニュウナイスズメ」という構造が分かりやすい。

🪶 2. 外見の特徴 ― 赤褐色の頭とすっきりした輪郭

見た目は似ているが、慣れてくるとスズメとの違いは多い。

  • オス: 頭が赤褐色で、頬に黒斑がない
  • メス: 全体に淡い色合いで、スズメより落ち着いた印象
  • 体つき: スズメより細身で、軽く見える
  • 動き: 樹上での移動が多く、跳ねるより“枝伝い”が得意

街中で見かけることは少ないため、見つけられたときの喜びは大きい。 森の光に赤褐色が映える、小さな美しさをもつ鳥だ。

🍃 3. 生態と行動 ― 森と里山を中心に生きる鳥

ニュウナイスズメはスズメよりも“木のある環境”を強く好む。

🌱 生息環境

  • 雑木林・里山・林縁部
  • 耕作放棄地や果樹園にも現れる

🪺 繁殖

  • キツツキが開けた樹洞を利用する
  • 人工物の隙間を使うことは稀
  • 巣材は草・羽毛・木の繊維が中心

🌾 食性

  • 草の実・小昆虫・果実などを季節で使い分ける
  • 特に夏は昆虫を多く取る

スズメより“自然に寄った生き方”で、森林と農地の中間帯で存在感を発揮する。

🧩 4. スズメとの違い ― どこに暮らすかが最大の分岐点

同じ属でありながら、二種は環境の選び方がまったく違う。

  • 巣の場所: スズメ=人工物中心/ニュウナイ=樹洞中心
  • 生息環境: スズメ=町・農地/ニュウナイ=森林・林縁
  • 群れ: スズメ=季節で大群も形成/ニュウナイ=小群が多い
  • 識別点: スズメ=頬に黒斑/ニュウナイ=頬に斑なし

この違いは、進化の過程で「どの環境を使うか」という選択が大きく分かれた結果だ。 町の鳥と森の鳥――二つのスズメが別の道を歩み続けている。

🌙 詩的一行

木立の影をすり抜ける赤い羽が、午後の風にそっと揺れていた。

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