🌳シイカシ2:照葉樹林の記憶 ― 南の森の古層 ―

シイカシシリーズ

― 雨と温もりの国に生まれた森 ―

風のぬるい南の海から、雲が立ちのぼる。
雨が山に届き、湿った空気が森を包む。
ここは、冬の短い国。
その湿りの中で、常緑の森が生まれた。


🌿 照葉の森とは

照葉樹林とは、厚く光る葉をもつ常緑広葉樹の森。
スダジイ、カシ、タブノキ、ヤブツバキ――
日本の南西から東海、太平洋側の低地に広がる。
葉の表面がワックスのように光るため、
「照葉(てるは)の森」と呼ばれる。

その光沢はただの装飾ではなく、
強い日差しと雨に耐えるための自然の鎧
この森は、暑さと湿りの中で何万年も生きてきた。


🍃 古層の記憶

照葉樹林の起源は古く、
氷期の寒さにも南の海沿いで命をつないできた。
シイやカシはその「生き残り」。
つまり日本の森の中で、もっとも古い層に属する木々だ。

落葉樹が“変化する森”なら、
常緑樹は“続いてきた森”。
この持続の時間が、
日本の文化や記憶の根を支えている。


🪵 人と森の境界

かつて人々は、この森を伐りながらも離れられなかった。
燃料、木の実、木陰、水。
南の村の暮らしは、照葉の森とともにあった。
シイの実をすりつぶし、カシの木で家を組む。
森はただの背景ではなく、生活の内側にあった。


🌙 詩的一行

光る葉の下に、千年の湿りが眠っている。


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