🌳シイカシ12:風の道 ― 南の森を渡る流れ ―

シイカシシリーズ

南の森の風は、重い。
水を含み、葉の間をすべるように進む。
その流れは森を冷やし、
同時に、森の香りを運んでいく。


🌿 葉がつくる風の道

照葉樹の森では、風がまっすぐ通らない。
分厚い葉と枝が空気をほどき、
小さな渦をいくつも生み出す。
森の中では、風が「歩く」ように動いている。

その緩やかな流れが、湿りを保ち、
森の温度を安定させる。
常緑の森は、風をゆっくりにする森だ。


🌾 森を冷やす呼吸

風は、森の体温を下げる。
葉の間を抜けるたびに、水滴が蒸発し、
熱を奪って空気を冷やす。
それがまた上昇し、
新しい風を呼び込む。

照葉樹の森は、
自分の中で小さな気候をつくっている。


🍃 風が運ぶもの

風は、花粉を運び、香りを運び、
森の中の“声”を広げていく。
遠くのシイの花の匂いも、
湿った木の香も、風がつないでいる。

森の中を吹く風には、
無数の命の粒子が混じっている。
それを感じ取れるとき、
人は森の呼吸の一部になる。


🌙 詩的一行

風は、森の声を形にしている。

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