🦆潜水ガモ17:湖沼の環境変化と潜水ガモ|静かな水面に起きていること

潜水カモ

― 湖は沈黙している。しかし、変化は水の下で進んでいる ―

潜水ガモが暮らす湖や湾は、季節とともに表情を変える。 だが近年、その変化はあまりにも速く、深くなった。 水質の悪化、外来種の増加、餌資源の減少―― 静かに見える水面の下で、彼らの生活圏は確実に狭まっている。


🌾目次


🌱 湖沼の変化 ― 水質と生態系のゆらぎ

かつて冬になると数万羽の潜水ガモが集まった湖も、 いまでは数が減っている。 富栄養化によるアオコの発生や、水草の衰退、 底質の変化が潜水ガモの採餌環境を奪っている。 透明度の低下は、水中で獲物を探す彼らにとって致命的だ。

「静かな湖」は、見た目ほど静かではない。


🌿 餌資源の減少 ― 底生生物の危機

潜水ガモの多くは、水底の貝や甲殻類、水生昆虫を食べる。 しかし、湖底の酸素が失われると、それらの生物は生きられない。 特にスズガモやホシハジロが好むモノアラガイやユスリカ幼虫は、 水質の変化に敏感で、消失が報告されている。

食卓を失った鳥たちは、より過酷な移動を強いられている。


🔥 外来種と競合 ― 生態バランスの乱れ

外来魚(ブラックバス・ブルーギルなど)の増加も大きな問題だ。 これらは潜水ガモの餌となる小魚や昆虫を食べ尽くし、 同時に水草を荒らしてしまう。 また、アヒルやカルガモとの交雑個体も各地で報告されており、 生態系と遺伝的な純粋性の両方が揺らぎつつある。

湖の静けさの裏に、競争と淘汰の波が潜んでいる。


💧 保全の取り組み ― 湖を取り戻す動き

各地で環境回復の取り組みが進んでいる。 石川県・片野鴨池では水位や水草の管理が行われ、 滋賀県・琵琶湖では外来魚駆除と底質改善が続けられている。 また、観察地周辺ではエコツーリズムの形で、 「見ることが守ること」に繋がる活動も広がっている。

人と鳥が同じ湖を共有できる未来を目指して、 いま、水辺の再生が静かに始まっている。


🌙 詩的一行

見えない変化の中で、彼らは今日も潜っている。


🫧→ 次の記事へ(海鳥との境界 ― アビ・カイツブリとの比較)
🫧→ 潜水ガモシリーズ一覧へ

コメント

タイトルとURLをコピーしました