🦆潜水ガモ10:ホオジロガモ ― 森の湖に響く羽音|金の瞳をもつ静寂の鳥

潜水カモ

― 森に囲まれた湖に、ひとつの音が響く ―

それは風でも水でもない。 羽が空気を切る音――ホオジロガモの羽音だ。 冬の朝、薄氷の湖面をわずかに割って飛び立つ姿は、 静寂の中の生命そのもの。 金色の瞳が、森の光を映していた。


🌱 基礎情報 ― ホオジロガモという鳥

分類: カモ科ハジロ属(Bucephala clangula)
全長: 約45cm 翼開長: 約75cm
分布: 北半球の冷帯に広く分布。日本では冬鳥として北海道・本州北部などに渡来。
特徴: オスは黒い頭に円形の白斑、メスは灰褐色で頭頂が膨らむ。両者とも金色の目が特徴的。
食性: 貝類・水生昆虫・小魚などを潜水して捕食。
鳴き声: 羽音が大きく「ビュッ」と鳴るように聞こえる。
識別ポイント: 白い頬斑、金色の目、短く力強い体形。


🌾目次


🌱 森の湖に響く音

ホオジロガモは、森と湖を行き来する潜水ガモ。 朝霧のなか、水面をわずかに震わせながら潜る。 飛び立つとき、羽が「ビュッ」と鳴る独特の音を立てる。 それは彼らの存在を知らせるサインのようでもあり、 森の静寂を揺らす一瞬のリズムでもある。

その音を聞いた者は、たぶん一度で彼らを忘れられない。


🌿 外見と見分け方 ― 白い頬斑と金の瞳

オスの黒い頭には、くっきりとした白い円形の斑があり、 それが名前の由来でもある。 光が当たると頭部が緑や紫に輝き、金色の目が映える。 メスは落ち着いた灰褐色で、嘴の先がわずかに黄色く色づく。

小柄ながら厚みのある体形で、水中でも浮力を抑えた潜水が得意。 静かな湖に映えるその金の瞳は、冬の陽の光を宿している。


🔥 潜水と採餌 ― 森の湖底で生きる

ホオジロガモは10〜25秒ほど潜り、水底で貝や昆虫を捕食。 嘴で砂を掘り、小さな貝や幼虫をついばむ。 潜水中は羽をたたみ、脚だけで静かに進む。 水面に浮かぶときの音もほとんどなく、 まるで湖がひとつ呼吸をしたような静けさが残る。

水中で光るその金色の目は、闇の中の灯火だ。


💧 繁殖と渡り ― 樹の洞に巣を作るカモ

ホオジロガモは樹洞営巣性のカモ。 繁殖期には北方の針葉樹林帯に渡り、古木の洞に巣をつくる。 ヒナは孵化するとすぐに巣から飛び降り、水へ。 地上に落ちても無事に走り出すその姿には、 自然の設計の精妙さがある。

秋には家族単位で南下し、日本各地の湖沼で越冬する。 森と湖をつなぐ渡り鳥、それがホオジロガモだ。


🌊 観察地と季節の風景

  • 🟢 北海道・阿寒湖 ― 厳冬の森に響く羽音。
  • 🔵 青森県・十和田湖 ― 雪解けの頃に見られるつがい。
  • ⚪ 長野県・木崎湖 ― 森に囲まれた静かな湖面で観察できる。

静寂の中に響く羽音、金の瞳の閃き。 それは冬の森が奏でる一瞬の詩だ。


🌙 詩的一行

森の呼吸の中で、ひとつの羽音が時を刻む。


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