鳥インフルは「季節の話」ではなくなった

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鳥インフルは「季節の話」ではなくなった
― 世界で拡大する監視強化と、日本の防疫(12月)

渡りの季節が深まると、
世界の地図に、同じ印が増えていく。

高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)
野鳥の移動とともに広がり、
各国が「監視」と「封じ込め」に力を注ぐ局面に入っている。

近年は、
「家きんの病気」だけでは終わらない。
野鳥の流行が濃くなると、
農場、庭先飼い、そして周辺の野生動物へと、
境界を越える。

■ ヨーロッパ:野鳥の流行が急増、冬に向け警戒が続く

欧州では、冬に向けて野鳥の感染確認が増え、
当局が監視強化を続けている。

スペインでは、マドリード近郊で野鳥(コウノトリ)多数の死骸が確認され、
当局がバイオセキュリティ手順のもとで回収を進めたと報じられた。
(商業養鶏への波及は確認されていない、という説明も添えられている)

欧州食品安全機関(EFSA)も、
2025年の冬期にかけて、
野鳥と家きんの双方で新たな発生が続く見通しを示し、
監視・防疫の継続を呼びかけている。

野鳥の波が大きくなるほど、
農場側は「侵入させない」ためのコストと緊張を抱える。

■ アメリカ:野鳥の流行に加え、監視対象が広がる

米国では、H5N1が野鳥に広く存在し、
家きんの発生に加えて、
乳牛など「鳥以外」への波及も含めた監視体制が整えられてきた。

米当局(USDA/APHIS)は、
野鳥の流行が家畜へ入り込むリスクを前提に、
予防と検知の仕組みを広げている。

公衆衛生当局(CDC)も、
リスク評価と状況の更新を続け、
「人へのリスクは一般に低いが、状況監視が重要」
という枠組みで情報を出している。

■ 日本:国内でも確認が続き、防疫は「毎年の作業」になった

日本でも、
冬の入り口に、
高病原性鳥インフルエンザへの警戒が高まっている。

農林水産省は、鳥インフルに関する情報を集約し、
国内発生状況や、農場で求められる対策を整理している。
また、2025年度(令和7年度)秋以降の国内情報も、
更新される形で公開されている。

たとえば鳥取県では、2025年12月2日に、
高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜確認があったとして、
注意喚起と対策の呼びかけが出されている。

国内の防疫は、
「発生が起きた地域だけの話」ではなく、
渡りの季節に合わせて、
全国で日常的に積み上げられる作業になっている。

■ なぜ拡大するのか:渡り鳥、農場構造、そして「接点」

HPAIは、
野鳥の移動とともに広がりやすい。

問題は、
野鳥が“悪者”だからではない。

野鳥のルートの上に、
人の飼育環境がある。
水場があり、
餌場があり、
作業動線がある。

その「接点」をどれだけ減らせるかが、
国を問わず、現場の勝負になる。

■ いま現場で求められること:監視と侵入防止の徹底

各国の方針は違っても、
現場で積み上げられる対策は似ている。

・野鳥を農場に近づけない(防鳥ネット、餌・水の管理)
・人と車両の動線を分ける(消毒、立入制限)
・飼養衛生管理の徹底(衣服・長靴の交換、器具の洗浄)
・異常死の早期通報と検査(遅れが拡大を生む)

そして、
監視は「強めれば終わり」ではない。
渡りが続くかぎり、
次の波が来る。

■ 食卓への影響をどう見るか

鳥インフルは、
食の不安として語られやすい。

ただし日本では、
汚染が疑われる鶏肉・卵が市場に出ない仕組みが前提にあり、
加熱でウイルスは不活化される、という整理も示されている。

一方で、
防疫は“コスト”でもある。
生産現場の負担は積み上がり、
流通や価格へ、遅れて影響が出ることもある。

■ 鳥の病気が、社会の鏡になる

鳥インフルは、
ウイルスの話であると同時に、
自然と産業が重なる場所の話でもある。

野鳥の移動は止められない。
止められるのは、
人の側の管理だけだ。

世界が監視を強めるのは、
恐れのためだけではない。
「次の波を小さくする」ための習慣を、
社会が学び直しているからだ。

🌍 せいかつ生き物図鑑・世界
― 渡りの季節と、監視の季節 ―

出典:Reuters(スペインの野鳥事例)/EFSA(欧州の警戒情報)/USDA-APHIS・CDC(米国の監視情報)/農林水産省(国内情報)/鳥取県(疑似患畜の注意喚起)

🌎前回の記事→ 国際的な密猟・密輸取締で記録的摘発― Interpolが明らかにした最大規模の闇市場

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