カリブ海サンゴ礁が1980年以降に48%のハードコーラルを喪失
― 海の「色」と「骨格」が崩れる、長期変化を示す最新研究 ―
海の底には、色がある。
赤、青、黄色、枝の影、光の粒。
サンゴ礁は、海のなかで最も複雑な色の地図を持つ生態系だ。
しかし、カリブ海でその地図が静かに失われつつある。
2025年12月に発表された最新研究は、1980年から現在までに、ハードコーラルの被度(占有面積)が48%減少したと報告した。
■ サンゴ礁の「骨格」が崩れ続けている
ハードコーラルは、サンゴ礁の“骨格”を形づくる存在だ。
枝状のもの、岩のように固いもの――それらが長い時間をかけて積み重なり、
魚やエビ、貝類、無数の小さな命が暮らす立体的な世界ができる。
研究チームは、数十年にわたる海洋調査データを解析し、
カリブ海全域でサンゴの被度がほぼ半分に減ったことを突き止めた。
これは単なる“色の喪失”ではなく、
生態系の土台そのものが弱くなっていることを意味する。
■ なぜサンゴは失われたのか ― 4つの要因
研究が示した原因は、ひとつではない。
1)海水温上昇による白化(気候変動)
2)オニヒトデや病気による大量死
3)沿岸開発と汚濁によるストレス
4)嵐・ハリケーンの増加(極端気象)
これらが重なり、サンゴが持つ回復力(レジリエンス)は年々弱まっている。
かつて数年で元に戻った景観は、いまでは数十年かけても戻らない。
■ サンゴ礁消失の影響は「美しさ」だけにとどまらない
サンゴ礁は世界の魚種の25%以上が依存する基盤生態系。
その崩壊は、海の暮らしを大きく揺るがす。
・観光と漁業の収入減
・沿岸の防災力の低下(波や嵐の力を弱める機能の喪失)
・食料安全保障への影響
・生物多様性そのものの縮小
海の色が失われるということは、海の働きが失われるということだ。
■ それでも回復の道は残っている ― 希望と課題
深刻な数字に見えるが、研究者たちは希望も示している。
・保護区の適切な運用
・水質改善
・乱獲の抑制
・病気の監視と早期対応
・生育に強いサンゴの移植
これらを組み合わせることで、局所的にはサンゴ礁が回復している例もある。
ただし、最大の課題は変わらない。
海を温め続ける“気候変動そのもの”に対処しなければ、回復速度は追いつかない。
■ まとめ ― 海に残された「青の記憶」を守るために
48%という数字は、海が静かに発しているSOSだ。
色を失うというのは、生態系がゆっくりと崩れていく兆しでもある。
1980年当時の海を知る人がいまの海を見ると、誰もが気づく変化。
浅場の光の揺らぎ、枝状サンゴの影、魚の密度――。
最新研究が示した48%という数字の向こうには、
「海の生きものが安心して暮らせる場所が半分消えた」という事実がある。
それでも、海の回復力は決してゼロではない。
私たちが選ぶ行動次第で、海の色は守ることができる。
🌏 せいかつ生き物図鑑・世界編
― 海の色と生態系の未来を見つめる観察記 ―出典:The Guardian(2025年12月9日)/最新サンゴ礁研究
🌎 前回の記事 → Bezos Earth Fund が海洋保護に 2,450 万ドルを拠出― 中米の海をつなぐ「国境横断型海洋保護区」構想が動き出す ―
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