Bezos Earth Fund が海洋保護に 2,450 万ドルを拠出

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Bezos Earth Fund が海洋保護に 2,450 万ドルを拠出
― 中米の海をつなぐ「国境横断型海洋保護区」構想が動き出す ―

海は一枚の青い地図でつながっている。
けれど、人間が引いた国境は、その地図をいくつにも割ってしまった。
魚もサメもウミガメも、ただ潮の流れに身を任せて移動するだけなのに、
保護の仕組みは国ごとに切り離されている。

そんな海の断片をふたたびつなぎ直す試みが、静かに始まった。
2025年12月、Bezos Earth Fund(ベゾス地球基金)は、中米4カ国にまたがる海洋保護プロジェクトに2,450万ドル(約38億円)を拠出すると発表した。


■ 中米4カ国がつなぐ「移動する命の回廊」

今回支援を受けるのは、コスタリカ、パナマ、コロンビア、エクアドルの4カ国。
それぞれの国境には、海の生きものたちが季節ごとに行き交う海域がある。

特に注目されているのは、ガラパゴス諸島とココ島をつなぐ海域。
シルバーティップシャーク、ハンマーヘッドシャーク、アオウミガメをはじめ、
回遊する大型生物の“海の道(コリドー)”として世界的に重要な場所だ。

海の生きものは国境を知らない。
だが、保護区は国境で途切れる。 この“ずれ”を解消しようというのが、今回の国境横断型保全の核心だ。


■ ベゾス地球基金の狙い ― 「自然資本」への本格投資

ベゾス地球基金は、2030年までに100億ドルを環境・保全分野へ投資する計画を掲げている。
その中でも今回の支援は、海洋生態系の「自然資本としての価値」を具体的に評価した上での政策投資と言える。

・サメや大型魚の回復は、生態系全体の安定につながる
・健全な海は漁業や観光の持続に寄与する
・海洋炭素吸収(ブルーカーボン)にも長期的な利益がある

つまりこの支援は、自然を守るだけでなく、人間社会の“未来の利益”を守るための投資でもある。


■ 新しい保護区の形 ― 「海は線で区切れない」という前提へ

これまでの海洋保護は、国ごとの保護区指定に依存していた。
しかし、サメやウミガメは一年の間に複数の国境を行き来する。
どれだけ一国が努力しても、隣国に保護の仕組みがなければ守りきれない。

今回のプロジェクトが目指すのは、「国境を越えた生態系の保護」
海流・回遊・繁殖海域のつながりに基づいて保全を組み立てる、
いわば“生きものの地図”に沿った保全だ。

海を国の所有物としてではなく、共有の生命圏として扱う考え方。
それは、21世紀の海洋保護のひとつのモデルになり得る。


■ まとめ ― 「つながり」を守る保全へ

海の命を守るというのは、
特定の島を守ることでも、特定の魚を保護することでもない。

大切なのは、「生きものが旅する道筋そのもの」を守ること。
海の中の見えない回廊は、大陸よりも古く、国境よりも長い歴史をもつ。

今回の2,450万ドルの支援は、そんな道のひとつを未来へ残すための一歩だ。
静かな海の下で続いてきた回遊の線を、私たちがどうつなぎ直すか。
その問いが、次の海洋保全の時代を形づくっていく。

🌏 せいかつ生き物図鑑・世界編
― 海といのちの“つながり”を見つめる観察記 ―

出典:Reuters / Bezos Earth Fund(2025年12月9日)

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