アフリカ熱帯林「炭素吸収源」から「炭素放出源」へ

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アフリカ熱帯林が「炭素を吸う森」から「炭素を放つ森」へ
― 世界の気候基盤を揺るがす最新研究(2025年)

長いあいだ地球の「肺」と呼ばれてきたアフリカの熱帯林。
しかし2025年に発表された大規模分析で、
この森がついに炭素吸収源から“炭素放出源”へ転換したことが示された。

世界最大級の森林生態データを解析した研究チームは、
「アフリカ熱帯林はもはや、温暖化のブレーキではなく
“加速装置”として働きはじめている」と報告している。

■ 森林はいま何を失ったのか ― バイオマス喪失の深刻さ

今回の研究は、2010年代以降の衛星データと地上観測を組み合わせ、
アフリカ中央部を中心とする熱帯林の変化を追跡したものだ。

その結果――

◆ アフリカの熱帯林は毎年およそ 1,060億kg 以上のバイオマスを失っている
つまり、それだけの木が倒れ・枯れ・削られ、
炭素を“吸収する”存在から“放出する”存在へと変わってしまった。

要因としては、

  • 森林伐採による裸地化
  • 鉱山開発・インフラ建設
  • 小規模農地の拡大
  • 干ばつ・高温による木々の大量枯死

など、人為的要因と気候要因の複合ストレスが挙げられている。

■ “地球の炭素循環”の根幹が揺らぐ

これまで熱帯林は、地球全体の温暖化を抑える「吸収の柱」として、
人類が排出する膨大な二酸化炭素を吸い込み、気候を安定させてきた。

しかし――アフリカの熱帯林は、いまやその逆だ。

吸収 → 吸収低下 → 収支ゼロ → そして「放出」へ。
この勾配は、すでにアマゾンや東南アジアの熱帯林でも確認されつつあり、
世界の主要な熱帯林三地域すべてが “限界” に近づいていることを示す。

研究者たちは、この転換を
「地球の気候システムにおける最も危険な兆候のひとつ」
と位置づけている。

■ 森が失われると、森に生きるものも消えていく

炭素の問題だけではない。
熱帯林は、数百万種類の虫・鳥・哺乳類・菌類が息づく巨大な生命圏だ。

森林が劣化すると、

  • 樹上性ほ乳類(コロブス類・レムール類)
  • 受粉を担う昆虫やコウモリ
  • 土壌生態系を支える菌類

など、森を循環させる生物たちが次々と減っていく。

とくにアフリカ中央部では、果実を食べ種子を運ぶ大型動物が減少しており、
森の再生そのものが弱まりつつある。
森が弱る → 生き物が減る → さらに森が弱る
この負の連鎖が見えはじめている。

■ ヒトの生活とも無縁ではない ― 水・食料・地域社会

アフリカの熱帯林は、地域の人々にとっても vital な存在だ。

  • 河川の水源を支える
  • 洪水と干ばつのバランスを調整する
  • 野生動物と共存する農牧文化を支える
  • 薬用植物や森林資源を提供する

もし森林が失われ続けるなら、
地域社会の暮らしはもちろん、
アフリカ全土の水循環・農業・食料安全保障にまで影響が及ぶ。

そしてその影響は、**アフリカだけでは終わらない**。

■ 森は“地球規模の気候装置” ― その歯車が軋みはじめた

熱帯林は、言ってしまえば「地球の巨大な空気清浄機」でもある。

その装置が、今まさに逆回転を始めている。
これは研究者だけの危機感ではない。
世界中の気候モデルが、熱帯林の崩壊を“ tipping point(転換点)”として扱い、
そこを越えれば温暖化を止められなくなる可能性があると警告する。

つまり、アフリカ熱帯林の変化は――

「地球の未来予報」の重要な赤いランプが点灯した、ということだ。

■ 森の奥で何が起きているのか ― まだ答えは出ていない

研究者たちは今後、より緻密なデータと長期観測に基づき、
炭素放出の実態、劣化のスピード、回復力の有無を調べる予定だ。

森は沈黙しているように見えるが、
そこでは木々の衰退、動物たちの移動、土壌の変化……
多層的な変化が静かに進み続けている。

その“見えない現在進行形”を読み解くことが、
これからの地球の方向を考えるうえで欠かせなくなる。

夕暮れ、アフリカの森を横切る風の向こうで、
木々はゆっくりと姿を変えている。
その変化は、遠い大陸の話ではない。
私たちの暮らしの基盤と、静かにつながっている。

🌍 せいかつ生き物図鑑・世界編
― 変わりゆく地球を見つめる観察記 ―

出典:The Guardian(Africa’s forests transformed from carbon sink to carbon source, 2025)

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