見えない生き物たちを守る計画
― 微生物多様性、ついに世界保全の議題へ(2025年11月)

世界のNEWS

見えない生き物たちを守る計画
― 微生物多様性、ついに世界保全の議題へ(2025年11月)

地球上の生命の大部分は、肉眼では見えない。
その“見えない99%”とも呼ばれる微生物が、今年ついに国際的な保全枠組みに組み込まれようとしている。

11月、国際自然保護連合(IUCN)の中に、微生物多様性を専門に扱う新組織が発足した。
その名は「Microbial Conservation Specialist Group(MCSG)」。
これまで動植物中心だった保全政策に、初めて微生物が正式に加わる。

■ 微生物は“地球の基礎”だった

新たに発表されたロードマップによると、微生物は
・生態系の循環
・炭素・窒素などの循環
・植物や動物の健康維持
に不可欠であり、地球のすべての生命がその働きの上に成り立っている。

しかし、人間の活動により微生物の多様性もまた失われつつある。
農地化、汚染、気候変動、乱開発……。これらは目に見える動物だけでなく、
土壌や水中に暮らす“見えない生き物”にも影響を与えている。

■ 新しいロードマップが示すもの

今回発表された国際ロードマップには、
評価・モニタリング・保全・共有の4つの軸が示されている。

特に注目されているのは、
「絶滅リスクの評価基準」を微生物にも適用するという決定。
これにより、動物や植物と同じように、微生物も科学的な基準で保全対象として扱われる。

■ 研究者のことば

論文著者らはこう述べる。
「微生物は“地球の土台”であり、その喪失は表に出る前に静かに進む。
気づいたときには取り返しがつかない可能性がある」

これまで保全の議論から抜け落ちていた領域が、ようやく光の下に出てきた形だ。

土の匂いの中にも、海の底にも、氷の縁にも、見えない生き物たちが息づいている。
その声なき存在を守るための国際的な一歩が、静かに踏み出された。

🌍 せいかつ生き物図鑑・世界編
― 変わりゆく地球を見つめる観察記 ―

出典:mSystems(2025年11月)/ScienceDaily(2025年11月)

🌎前回の記事→ 鳥インフルエンザが南極圏に広がる兆し― Heard Island のゾウアザラシに異変

📖 他の記事はこちら

コメント

タイトルとURLをコピーしました