鳥インフルエンザが南極圏に広がる兆し
― Heard Island のゾウアザラシに異変(2025年11月25日)
オーストラリアの南、はるか外洋に浮かぶ Heard Island(ハード島)。
この準南極の孤島で、今年、見過ごせない変化が観測された。
研究者らによれば、島の海岸に集まる ミナミゾウアザラシ の一部に、
高病原性 H5N1 鳥インフルエンザ の感染が疑われる症状が見られたという。
報告によると、通常の繁殖期には見られない数の死亡個体が確認され、
検査のための試料が急ぎ本土へ送られている。
この海域での H5N1 感染疑いは極めて異例で、調査チームは
「鳥類から海獣類への拡大、あるいは渡り鳥の経路を通じた流入の可能性」を指摘している。
■ 海獣たちの“静かな異変”
ミナミゾウアザラシは、繁殖のため毎年この島へ集まってくる。
しかし、今年は 行動の鈍さ・集団の偏った分布・呼吸異常 など、
例年とは異なる兆候が複数の地点で観察された。
鳥インフルエンザは本来“鳥の病”だが、
感染が海獣にまで広がるケースは近年増えており、
南極圏の生態系にとっては 新たなリスク として注目されている。
■ 孤島は、生き物たちの交差点
Heard Island は南極収束帯の近くに位置し、
外洋を回遊する鳥類・アザラシ・クジラが行き交う地点でもある。
そのため、ウイルスが“どこから来たのか”を断定するのは難しい。
ただひとつ言えるのは、
離れた世界だと思われていた極域も、地球全体の変化と無関係ではないということだ。
海水温や風の流れ、渡りのルート、すべてが少しずつ変わり、
その影響が静かに、しかし確実に生き物たちに及び始めている。
波打ち際では、海から上がったばかりのアザラシが、
崩れた砂浜の上でしばらく動かずにいた。
冷たい風のなか、その瞳はどこか疲れて見えたという。
uote>🌍 せいかつ生き物図鑑・世界編
― 変わりゆく地球を見つめる観察記 ―出典:Polar Research News(2025年11月)/Australian Antarctic Division
🌎前回の記事→海氷が早く割れる年 ― 北極海で続く“足場の消失”
📖 他の記事はこちら
コメント