ボリビア東部・ベニ県。
雨季と乾季が強く入れ替わる低地の湿地で、静かな奇跡が起きた。
20年以上姿を見せず、ほぼ絶滅と考えられていた年魚(キリフィッシュ)の一種 Moema claudiae が再び確認されたのだ。
Moema 属の魚は、雨季に現れる一時的な池で一生を終える“年魚”。
水があるのは数か月だけ。
そのわずかな季節に産まれ、成長し、卵を残して消えていく。
今回の再発見は、小さな泥の窪地にわずかに残った水の中で行われた。
地元研究者は「乾燥化が進む地域で、よく生き延びていた」と驚きを語る。
気候変動と土地利用が湿地を縮め、この魚の生息地は今や極めて限られている。
年魚の卵は乾季を土中で越すことで命をつなぐ。
だが、湿地そのものが消えれば卵も残らない。
研究チームは、今回の発見を「保全の最後のチャンス」とし、
池の保護と土地開発の見直しを呼びかけている。
この小さな魚は、人がほとんど気づかない湿地の陰で、季節の巡りとともに生きてきた。
その姿は、地球の最も脆い場所に宿る生命の“しぶとさ”を静かに伝えている。
🌍 せいかつ生き物図鑑・世界編
― 変わりゆく地球を見つめる観察記 ―出典:Regional Field Surveys(2025年11月)/Science News Outlets
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