森の声を聞く会議 ― コンゴ盆地と25億ドルの約束(2025年11月7日)

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赤道の下、アフリカ中央部に広がる深い森。
そこがコンゴ盆地――世界で二番目に大きな熱帯林だ。
この森が吸い込む二酸化炭素は、地球の“肺”と呼ばれている。
だがいま、その呼吸がかすかに乱れ始めている。

11月7日、ブラジル・ベレンで開催されたCOP30(国連気候変動会議)。
その場で「Belem Call for the Forests of the Congo Basin」が発表された。
フランス・ドイツ・ノルウェー・イギリスなどが中心となり、
総額25億ドル(約3800億円)を拠出する巨大基金だ。

目的は、コンゴ盆地の森林を守ること。
違法伐採を抑え、現地コミュニティが森と共に暮らせる仕組みを支援する。
資金は技術研修・衛星監視・再植林などに充てられる予定だ。

コンゴ盆地の森には、ゾウ・ゴリラ・オカピなど、
数え切れない命が息づいている。
だが、伐採・採掘・火災の影響で、毎年東京23区に匹敵する面積が失われている。
“開発”と“保全”――そのはざまで、森は静かに揺れている。

今回の「Belem Call」は、単なる資金援助ではない。
それは、“人と森の関係をどう結び直すか”という問いの始まりだ。
支援国の代表は言った。
「この森の未来は、地球全体の未来だ」と。

熱帯林はただの緑ではない。
その一本一本の木が、空気をつくり、水を呼び、命を繋いでいる。
人はその恩恵の上に立ちながら、しばしばその存在を忘れる。
だが、森はまだ語りかけている。
「わたしは生きている」と。

25億ドルという数字の向こうに、
一本の苗木を植える人の姿がある。
それが本当の“保全”の始まりだと、
この会議は静かに伝えている。

🌏 せいかつ生き物図鑑・世界編
― 変わりゆく地球を見つめる観察記 ―

出典:Reuters/The Guardian/UNFCCC/WWF/African Wildlife Foundation

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