IUCN世界自然保護会議2025 総括(2025年11月2日)
10月末、アラブ首長国連邦アブダビで開催された
IUCN(国際自然保護連合)世界自然保護会議2025。
世界170か国以上の政府代表・研究者・NGOが集い、
「次の20年で生物多様性をどう守るか」を議論した。
今回の会議の焦点は、
単なる“保護区域の拡大”ではなく、
自然と人の関係をどう再設計するかに置かれた。
🕊 主な成果と宣言
- 「アブダビ・コール・トゥ・アクション(Abu Dhabi Call to Action)」採択。
→ 2030年までに地球全体の陸と海の少なくとも30%を保全区域に設定する「30×30目標」の再確認。 - 気候危機と生物多様性損失を“同時に扱う”国際枠組みを強調。
- 沿岸域や湿地、海洋炭素(ブルーカーボン)保全を各国政策に統合するよう呼びかけ。
- 各地域での“コミュニティ主導の保全”を支援する新基金の創設。
- 絶滅危惧種リスト(IUCNレッドリスト)の改訂方針を発表。
🌏 変わりつつある視点
これまで「守る」ことが主語だった保全が、
いまは「共に生きる」ことへと変わり始めている。
現地の人びとが土地をどう使い、どう残すのか。
その関わりを尊重する“ローカル保全”が議論の中心に置かれたのは、
時代の転換点を感じさせる。
日本からも複数の研究者が参加し、
里地里山や沿岸湿地の事例が共有された。
「自然は遠くにあるものではない。
暮らしの中にあるものとして再定義する」
――この言葉が、多くの会場で繰り返された。
🌿 静かな決意
世界の議場で飛び交う数字や目標の裏には、
静かに進む無数の現場がある。
植林を続ける人、浜辺を掃除する子ども、
森を観察する研究者。
そうした“小さな手”の積み重ねが、
未来を動かす力になる。
アブダビの夜明け前、
砂漠の向こうに昇る太陽が赤く輝いていたという。
それは、地球の希望がまだ消えていないことの証かもしれない。
🌏 せいかつ生き物図鑑・世界編
― 変わりゆく地球を見つめる観察記 ―出典:IUCN/UNEP/WWF/朝日新聞国際報道部
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