🌍 世界10:鱗の下にある命 ― センザンコウ、保護へ向けた提案

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米国が“世界で最も密売される哺乳類”に踏み出した一歩(2025年11月1日)

夜の森を歩くと、
乾いた葉の上を小さな影が転がるように進む。
それがセンザンコウ――
鱗に覆われた唯一の哺乳類だ。

アジアやアフリカでは、
その鱗が薬や装飾品として取引され、
肉は“珍味”とされる。
そのため密猟と違法取引が絶えず、
センザンコウは「世界で最も密売される哺乳類」と呼ばれている。

そんな中、アメリカの野生生物局(U.S. Fish and Wildlife Service)が
センザンコウを絶滅危惧種法(Endangered Species Act)の保護対象に追加する提案を発表した。
正式な決定ではないが、これは国際的な保護体制を強化する大きな一歩だ。

もしこの法案が可決されれば、
アメリカ国内でのセンザンコウの取引・販売・輸入が全面的に禁止される。
また、国際市場においても米国が“保護の側に立つ”という強いメッセージになる。

世界には8種のセンザンコウがいる。
そのすべてがIUCNレッドリストで絶滅危惧に分類されている。
特にアジアのセンザンコウは激減し、
取引はアフリカ種にまで広がっている。
森を守る人々の手からも、
彼らは次々と姿を消していった。

だが、この提案が意味するのは単なる規制ではない。
“鱗の下にも温もりがある”という、人間のまなざしの変化だ。
冷たい商品として扱われてきた命を、
ようやく“生きもの”として見つめ直そうとしている。

センザンコウは夜行性で、
蟻塚を壊して舌で虫をすくい取る。
その慎ましい暮らしが、
人の欲の影に追いやられてきた。

提案という小さな動きの先に、
まだ森が残ることを祈りたい。
鱗のひとつひとつが、
遠い森の記憶を閉じ込めているように見える。

🌏 せいかつ生き物図鑑・世界編
― 変わりゆく地球を見つめる観察記 ―

出典:AP通信/WWF/US Fish and Wildlife Service

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